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2004.11.13

中国、新思考外交

 中国と軍拡競争しても勝ち目はありません。なぜなら、ミサイル防衛に全力投球している日本の防衛予算にそんな余裕は無いからです。そんな中でも、海空自衛隊は、対中シフトを深めています。ただ遺憾ながら、それを明確にすることが出来ない。出来ない以上、80年代に北海道を舞台に対ソで繰り広げたような、明々白々な対中シフトは、部隊配置上も予算上も取れないわけです。
 今後10年という意味で言えば、もう軍事的な敗北ははっきりしている。護衛艦は40隻に減らされ、戦闘機も、トータル200機などという数字が出されている。われわれが今中国に対して持っている軍事的優位性は、10年後にはもうシーパワーのレベルでも空軍力でも存在しないでしょう。
 今回、中国海軍が下手を打ったことは明白です。普段、海自の艦艇は、防空識別圏ぎりぎりになんか展開しない。今回、海自はそれをやってのけ、あそこが日本の支配地域であることを海軍力のプレゼンスという形で明確に誇示できた。しかも中国海軍は、迎撃の増援艦艇を出せなかった。これは彼らにとっては屈辱でしょう。
 でも、このわれわれの優位は、10年後はもうありません。それは覚悟するしかない。あの境界線にイーグルの2機編隊を上げたら、たちまちフランカーが10機上がってくるような時代がもうそこまで来ている。
 これは二重三重の意味でどうしようもないことです。実際に予算が無い、中国を仮想的と捉える世論は無いし、ましてや外務省や中国派が多い日本の政界状況では無理という部分で、中国シフトを大っぴらにすることは出来ないわけです。しかもこれは、こっそり対中シフトやってがんばりますというレベルで済む話じゃない。

 だったら、それは諦めて、武力に頼らず、東シナ海への野望を中国に捨てさせるしかない。ここで、どうしても避けて通れないのが台湾です。日本人のおおよそは、たぶん台湾は独立すべきだと思っているでしょう。しかし政府レベルでは、日本もアメリカも、台湾独立による不安定化を恐れている。ただここで今一度冷静に考えなければならないことは、果たして独立後の台湾はわれわれにとって歓迎できるのか? ということです。冷静に考えれば、独立後の台湾は、北京に対してよりフリーハンドな外交政策をとれるでしょう。最初はぎくしゃくするでしょうが、その文化経済的な結びつきの強さは、日韓の比じゃない。北京に、新思考外交を思考する指導層が出現したら、台湾との関係を、EUのような、緩やかな経済統合関係にすれば良いじゃないか? ということを言い出す日が必ず来る。そして台湾もそれに乗る日が来るでしょう。
 われわれは、台湾が仮に独立したら、容共の態度を取る台湾もあり得るのだということを覚悟しなければならない。
 さてここで、中国を抱き込むために必要なことは何かです。東シナ海の開発は、将来においても、そう採算が取れるものじゃありません。一方で、中国という大国は、あれだけの面積を持っていながら、実は資源小国です。彼らがなりふり構わぬ資源開発に乗り出す動機はそこにある。だったら、われわれは中国の資源獲得に協力すれば良いじゃないですか? 幸いそれは、シベリアの大地に眠っている。それに、資金も人も出すから、あんな金にならん所で軍事行動して、日本人の神経を逆撫でする必要はないと、アピールすれば良いんです。それは、こちらにもリターンのある話であって、まるっきり金が出て行くわけでもないのですから。
 ただそれはそれとして、今後とも外洋を志向する中国軍の戦略は変わらないでしょう。それとどう対峙すべきかは、きちんと考えなければならない。

* あと、いろんなブログで指摘されているけれど、沖縄のメディアは、今回の事件をほとんどスルーしている。沖縄県民に言わせると、「だってそんなの今に始まった話じゃないでしょうに」と仰るらしいんだが、それを言うなら、米軍の不祥事だって今に始まった話でなし。いざ米軍が沖縄から引き揚げる段になったら、その穴埋めをどうするか? という戦略を立てなきゃならないのに、この人たちはそれも知らん顔して、文句ばかり言うつもりだろうか。

※ 朝生、テレビとテキストの質感

 まず、以下のテキストを読んで下さい。これは先週のテロ朝朝生で、勝つぁんが田原にやり込められるシーンのテキストで、2ちゃんねるから持ってきましたが、元々何処にあったかは知りません。昨夜、やっとそのビデオを見たのですが、ままこの通りのやりとりでした。番組開始90分辺りの、れいの「日中戦争は侵略では無かった」発言です。

田原「勝谷さんに聞きたい つまり 日中戦争は そっからいきたい も一回ね 日本の侵略だと思う?思わない?」
勝谷「僕は思わない」
田原「どうして?」
勝谷「それは もう デティール言い出すときりがないけれども・・」
田原「いや きりあるよ 簡単に言えば?
勝谷「いや もっと言うんだったらですね 日韓排斥あたりからね 言うとですね」
田原「うん
勝谷「もっと言うなら 中国人が 今になって反日 反日と言うけれども じゃあ 中国人が親日だったことがかつて近代史にあったかっていうとですね ないんですよ ありましたかね」
田畑「ありますよ ありますよ」
田原「そんな難しい話じゃないよつまり さらに言うならば」
姜「あのねえ 日中戦争を侵略でないと言ったら じゃあ 戦場はどこだったの どこが戦場だった?」
田畑「何戦争だったの?」
姜「何戦争だったの? 少なくともこないださあ 満州事変を侵略戦争じゃないと 言う人がいたけれども
田原「いや もっと聞きたい あれはねえ 自衛の為の戦争だと言える?」
勝谷「いや それは違う」
田原「じゃあ なんだよ じゃどういう戦争なんだよ!」
勝谷「それは違うけれどもお ・・・」
田原「じゃあ どういう戦争? どういう戦争なの!」
勝谷「・・あれがですか ・・・・あれはだからそのう 列強が出て行くなかの 日本のだから その す・・・ どこをもって 日中・・ シ シナ事変の開始と言うかが 問題なんだけれども 
それは だから その 最初のきっかけ たとえばイラクがその大量破壊兵器のあったなかったってこと言ってますよね あの アメリカの場合ね 
イラク戦争にたとえて言うと・・・」
田原「いやね 僕はねアメリカの問題は 大量破壊兵器があったかなかったかではなくて 自衛のための先制攻撃だとブッシュが言ったことが問題だったと思う 
自衛の為の先制攻撃なんて言ったらね もう 全て自衛ですよ ねえ ワグナーさん」
ジェームズ・ワグナー「その通りです え 自衛と言う言葉だけで戦争はいつでも起こすことができる」
田原「できるよね だからね 日中戦争がね 自衛の戦争だとはどうしても思えない」
周囲のパネリスト「そりゃ常識だよ」「そりゃもう常識だ」
勝谷「侵略の戦・・・・」
田原「じゃあ 勝谷さんに聞くよ じゃ 何の為の戦争だったかってこと!!日中戦争は」
勝谷「・・・・・・日中戦争は?」
田原「はい」
勝谷「・・・・・・・・・・!」
田原「もっと言えば盧溝橋事件で どっちが撃ったかといえば 僕は中国が撃ったと思う でもそら現地で停戦になったんだよ 現地で停戦になってるのに 
なんでね 三師団をね 日本からダーンと送ったんだよ こら侵略だよ 明らかに 現地はね停戦協定やったんだよ ちゃんと!!」
勝谷「・・・!!」
田原「なのになんで三師団送らなきゃならないんだ 答えてみろ!」
勝谷「・・・・・・・・」
田原「反論!」
勝谷「・・・・・・・・・(汗)・・・・・・・・・・・」
田原「それ答えられないならね そんな偉そうなこと言うなつーの!!」
勝谷「いや ちがう だから 戦後 今からみて その あの・・・・・」

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 で、私はこのテキストを読んだ時に、なんて酷い司会者だろうと思った。勝つぁん、なんて可哀相な! 初めに結論ありきで、ゲストに恥を掻かせるなんて、なんて恥知らずな司会者だろうと。俺ならこんな番組には二度と出ないぞと。で、いざ、そのビデオを見て、私は勝つぁんのヘタレぶりに愕然としました。テキストの後のやりとりも酷いものです。↓ここに、そのシーンを4分ほどキャプチャーしてアップしました。ぜひ実際の映像を見て欲しいです。テキストと実際の映像では、印象がまるで違うことが解って貰えると思います。

http://www.ne.jp/asahi/eiji/home/main/asanama.wmv

【「日中戦争は侵略だったか」という田原さんの地雷をまんまと踏んで一瞬立ち往生した私に温かい声をいただいた。ありがとうございます(涙)。軍事的な詳細をここで言った方がいいのかと考えて出演者の顔を見渡して果たしてどのくらいのダイジェストでわかるかと悩んでいるうちにああいう事になってしまった。】

 ↑これは日曜の勝つぁんの日記だけど、嘘こくでねぇ! 軍事的な詳細なんかこれっぽっちもこの人の頭に入っていないことが、画面からひしひしと伝わってくる。あげくに、上にコピーしたテキスト部分には無いんだけど、「当時の日本人は、あれを侵略とは認識していなかった」と口を滑らせて、田原からピシャリと、石原完爾と青年将校の有名なエピソード(石原完爾は、これは侵略だから撤兵すべしと認定したが、じゃああんたがやった満州事変は何だよと、若手から突っ込まれた)を持ち出されて口籠もる体たらく(*田原としては、一応、軍事問題も喋れる男だからと、勝つぁんに振ったんだが、実は先の大戦に関しては、何も知らんことに気付いて愕然としたというのが事実でしょう。私は、あんな所で守備範囲外の時代の戦争に関して振られるのは迷惑だ)。
 この日は、勝つぁんは番組の最後にチベット問題を持ち出したとかで憂国な人々から誉められているんだが、とんでもない話ですよ。私は、15年戦争は侵略戦争だったと思っているけれど、いくら何でも、こんなヘタレな人間をテレビに出すな。北京の思うつぼだ。

※ メルマガおまけ スターリングラード12ch&名銃のお話し

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コメント

こんなヘタレな人間でも年収2000万だそうです。
このおっさんには100円ライターで充分かと

投稿: 饂飩は嫌い | 2004.11.13 10:41

大石さま。何から何まで用意していただいてありがとうございます。
 朝まで生テレビなんて10年ぶりに見ました。田原の髪の毛が白くなっている以外は、雰囲気はほとんど同じです。パネラーに入れ替わりはあるけれど。
 辻本がかつて西部にやり込められるヘタレキャラとして活躍(?)していたころ、辻本の講演会を聞きに行ったら、
「あの人はあの席で、酒飲みながら酔っ払いつつ話をしている。酔っ払いには勝てない」
というようなことを言ってました。酔っ払っていても、あれだけ理路整然とした発言ができる西部と、シラフでも印象批評しかできない辻本では、論者としての技量には圧倒的に差がありました。
 あのころは、テレビ局や本人の演出意図があって、辻本はあえてああいうキャラクターを演じているんだろうと思ってましたが、一昨年の不始末を見ると、三つ子の魂のナントカで、やっぱり議論する能力に欠けていました。

 戦争に二つの類型しかなくて、侵略戦争でないと言ったら、その補集合は自衛戦争になってしまうんで、別の対立軸(正義か悪か)を持ち出すしかないと思います。

投稿: 井上 晃宏 | 2004.11.13 10:44

日華事変関連だと別宮さんという方が外交用語としての「侵略」から
日華事変を考えるという面白い指摘をされています。
すでにご存知かもしれませんが以下にリンクを貼っておきます。
http://ww1.m78.com/question/sinojapanese%20war.html
http://ww1.m78.com/topix-2/the%20origin%20of%20sinojwar.html

投稿: スコップダンディ | 2004.11.13 14:29

 これ面白いサイトですね。いろんな問題でポイントを良く抑えている。

投稿: 大石 | 2004.11.14 12:47

 上記のサイト(第1次大戦)を基にした、「軍事のイロハ-バカな戦争をさせない88の原則」別宮暖朗・著(並木書房 1800円+税)が発売されています。
 Q&A形式で、具体的な例をあげながら軍事と外交の関係について論じておられます。でも、HPのような図はなく、文字のみなのが残念。

投稿: book808 | 2004.11.19 15:01

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受信: 2004.11.14 11:24

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