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2004.04.15

人質救出に求められる軌道修正

 火曜23時寝、3時には目が覚める。もうあれを見に行くには今しか無いと判断し、水分控えめにして、水曜朝10時のリング3の上映を見に行く。中年@オヂ幸せ感満喫。生きてて良かったと実感できるのは、真に優れた芸術に巡り会えた瞬間。もう私が生きている間に、この作品を越える叙事詩を映像として見られることは無いだろうと思う。詳細はメルマガにて

※ 作家の鷺沢萠さんが死去

 35歳の作家が心不全で突然死んだという記事は、言外に自殺ですと書いちゃっているようなものなんだが、惜しいですね。女流作家は大なり小なり破綻したプライバシーを切り売りしなきゃやっていけないご時世なだけに、彼女のように創作に集中している人には頑張って欲しかったですが。美人薄命ということか。合掌。

※ 道を誤らせたもの

 北海道の家族は、昨日も外国人記者クラブに出て解放を訴えていた。いい加減、それが逆効果だということに気付けないんでしょうか? 日本政府が情報公開を止めたのは、それがテロリストを勢いづけていることに気付いたからです。
 2度目の声明文は、日本での反応を受けて、西暦+イスラム歴が書き加えられたり、彼らが十分に日本での報道に留意していることを窺わせた。それは仲介者を名乗る人々の発言の端々にも垣間見えている。政府とは違い、日本国民はこの問題で連帯してくれていると勘違いする材料を日本の報道は与えてしまった。

 彼らを支援しているNGOという存在がありますが、これは変な人々なんですね。はっきり言えば、周囲が全く見えていない人々らしい。この人たちにとって優先することは何か? といえば、人質の解放では無いんですよ。これをチャンスに自衛隊を撤退させることです。それをテレビカメラの前でアピールできるチャンスを少しでも広げることです。家族がそれに引きずられて、いったい、この人たちは家族を解放して貰いたいのか? それとも自衛隊を撤退させたいのか? 世間の一定数は、どうもこの人たちは家族のことより、自分の政治的スローガンを政府に通させることの方が重要みたいだと受け取った。だから世間は醒め、反発を買ってしまった。その軌道修正も明らかに遅かった。
 しかも、マスコミが更にその状況を複雑にしている。今、この家族のもとには、世間の非難が殺到しているわけですね。メディアは、犯罪と意見表明を混同して伝えている。たとえば、タクシー10台呼ぶなんてのは、これは犯罪行為です、業務妨害であり詐欺です。でも、彼らが公開している電話やメール、FAXに、「自業自得でしょう?」と書いて送ってくることは、国民の当然の権利じゃないですか? そりゃ私が同じ目に遭ったら、とんでもない迷惑だと感じるけれど、一方で、家族は、テレビに引っ張りだこで、朝から晩までテレビに出ずっぱりで、自己責任原則を十分に認識していただろう家族を救い出すために、国中を沸騰させて議論して出した自衛隊を撤退させろと朝から晩まで、マスコミと合作を演じた。それに対して、マスコミは、その他の国民に反論の機会を与えたわけではない。だからこそネットはそれへの異論で沸騰したし、メディアに取り合って貰えない国民は、連絡が取れる手段で、あの家族に抗議もするでしょう。そういう意見表明と犯罪行為をごっちゃにして報じちゃ駄目でしょう。

 それで、彼らの窓口になり援助もしている人々が、今日本中のお仲間たちに連帯を呼び掛けているわけです。しかし、プロ市民もバカばかりじゃないですから、世論を冷静に観察している人々もいる。どうもこの窓口になり、救出の連帯を呼び掛けている連中は、国民のかなりが、この北海道家族の言動を快く思っていないという事実を認識していないらしい。それは一部の反動勢力による無視して構わない動きのように勘違いしているらしい。今もマッチポンプに熱心なメディアと組んでイケイケドンドンで自衛隊撤退を訴えている。

 いったん解放が約束された三人がなぜ解放されないのか? その最大の理由は、恐らく日本での反応です。犯人グループは、せいぜいこれで日本政府に警告できればと思ったはず。ところがいざふたを開けてみたら、自分らに連帯してくれる人々が日本にいて、朝な夕なにデモして、家族は朝から晩までテレビで自衛隊撤退を訴えている。こんなに美味しい人質を解放するなんてもったいないとなったことでしょう。
 本当に、彼らの解放を願うなら、今すぐ、報道を止めて、家族の姿を一切テレビに写さないことです。日本人の一人残らすが、この問題を綺麗に忘れ去ったことを彼らに明示すれば良い。

※ 「スカートのぞいてない」 植草教授「不当逮捕」主張

 一般的な痴漢犯罪である電車内の痴漢に関しては、被害当事者が勘違いして無実の人間が突き出されるというケースがほとんどですから、冤罪の可能性が高くなるけれど、このケースでは、警官がずっと張っていての逮捕ですから、ほとんどあり得ない。彼としては、ここで冤罪を主張することによって、罰金刑では済まずに公判へと進むわけですが、判決が確定するまではメディアの仕事は得られないけれど、ひょっとしたら無罪判決に賭けることも出来るだろうから、もう全てを失う身としてはそれしか無いという判断なのでしょう。
 ただ、日本には痴漢冤罪に的を絞った団体とかありますが、こういう所に、自分も入れてくれとやって来たらどうなるんでしょうね。やんわりとお断りするしかありませんが。ま、でも何とかなるでしょう。戦闘機アルバトラスの開発販売を嗅ぎつけ、イラクで使われている「RPG」とはミサイルだ! と暴いた(トンデモ)世界のジャーナリスト、ビッグマウス日垣先生がその凄腕で、植草氏の冤罪を暴いて下さるでしょうから(~_~;)。

>> アルジャジーラを通じて映し出されたビデオには、RPGを構えた兵士が3
>>人写っていました。ロール・プレイング・ゲームの略ではありません。RPG
>>とは携行型ミサイルのことです。バズーカ砲のごときRPGは、人質の胸や首
>>につきつけるべき銃器ではありません。メルマガ14日号より

 日垣先生、RPGは Rocket Propelled Grenade の略であって、ミサイルじゃありません。ま、ロケットとバズーカを一緒にしても良いけど、ミサイルは違います。いや、貴方にとっては装甲車を戦車呼ばわりしても全然構わないかも知れないし、私は、日本のジャーナリストを「軍事オンチ」だと切って捨てるようなことはまずしないけれど(だって知らんでも構わないし、食べて行けるんだから)、やっぱり、戦争に関して語るのであれば、ある程度の基礎知識は身に付けて欲しいと思う。

※ 陸自久留米駐屯地に男が車で侵入、隊員はねられ3人死傷

 ちょっと心の病を抱えた人物による犯行らしいですが、警務隊が対応するまでに8分も掛かっている。基地というのは、部外者の想像を絶する程広大ですから、ある程度の時間が掛かるのはやむなしとしても、久留米と言えば陸自にとってはメッカ。このご時世にこんな警備状況では、基地の突破は簡単だと宣伝してしまったようなもの。全国的に警備の見直しが必要となる失態ですね。合掌――。

※ 日垣先生、大宅賞逃す

 残念でしたね。日垣先生はことの他、大宅賞の受賞に熱心でいらしたのに。でもまだ、講談社ノンフィクション賞(は次回はあるんだろうか。今回の大宅賞受賞作がダブル受賞となった、こんなことやるべきじゃない)や、ホームベースの新潮社の賞もあるからどれか一つは貰えるでしょう。落選直後に配信されたメルマガでは、自ら各候補作の選評を書いておられますが、別に貴方が落選したのは、選考委員の顔ぶれのせいではありません。落選者の10人が10人、未練がましくこう言うんだが、だったらノミネートを辞退するのが筋だろう。

 ただ、大宅賞をこの人が貰える可能性は、内容に拘わらずほとんどありませんでした。過去の受賞者を見れば解るけれど、今回は日垣さんと並んで、溝口敦さんの名前もあります。このお二人のベテランの名前は何かと言うと、人寄せパンダのノミネートですよ。無名なジャーナリストだけだとメディアが集まらないから、ベテランを入れる。直木賞でもいつもやることです。
 加えて、この不況時に、すでに十分に儲けているベテランに賞を与えるかと言えば、選考委員は、そこまでお人好しじゃありません。自分の稼ぎを減らすことにもなりかねないから、ここは若手にチャンスをという美辞麗句で、ベテランは遠ざける。だったらノミネートなんかしなきゃ良いのにという話。
 もっとも、純粋にあの作品内容で判断されて日垣さんが受賞するとしたら、それこそ選考委員の知的センスを疑うと思ってはいましたが。日本のジャーナリズムでは、司法制度全体の問題を、裁判官個人の資質のせいにするのが今、流行っている。たとえば同時期に出た門田隆将氏の「裁判官が日本を滅ぼす」に至っては、タイトルそのものです。
 でもこういうのって、いかにも裁判官の任用や教育訓練を弄れば、裁判を巡る諸問題は解決するかのような錯覚を世間に与えかねないことです。確かに変な裁判官は多いけれど、あまり感心できない。

※ 文藝春秋、「画家と権力 平山郁夫の肖像」日垣隆を読む

 私にとって平山郁夫という名前は、弟さんが鹿屋基地の補給処長をしていらしたらしいという情報がインプットされているだけです。

「もし私が、何かの審議会メンバーにでもなって、低い手当の代わりに便宜供与を求め元がとれたと公言したら、どうなのだろうか」

 これは外務省への協力の見返りに、危険地帯旅行の手配の便宜供与で世話して貰ったと平山氏がインタビューで応えた部分に関する日垣氏の所感です。まず、日垣隆氏は、意外と小心ものでいらっしゃるみたいだから、自分が長野県教育委員会から便宜供与を受けたなんてことは白状しないでしょう。たとえそれが明らかになっても、いつものようにバックレるだけだから、商売には何の影響も無いことです。
 これは、書いたご本人に拠れば、「超問題作」なのだそうですが、何処がそうなのかさっぱり解らない。平山郁夫氏がどうやって今の地位を得たかを長々と書き、ご本人に当たり障りのないインタビューを行い(つまり本人が見ても全然構わない内容であることがそこで担保されるわけです)、海外で売れていないことをして、日本人の絵の値段の付け方に文句を言う。
 平山郁夫が海外で売れていないことをして、彼の国内評価が不当に高すぎるかのごとき判断をするのは、明らかに間違っていると思いますよ。なぜなら、じゃあ海外で売れている日本の現代画家の作風というのは、これことごとく、海外市場を念頭においたモダンアートが主ですよ。じゃあ浮世絵は何かと言えば、あれは骨董品としての価値も併せ持っているから売れるだけです。逆に考えてみれば良い。アメリカのモダンアート(とひとくくりにして何だが)系以外の画家の絵が日本で高い値が付けられることはまずない。絵というのはそういうものでしょう。

 平山郁夫の政治性が批判されるのは別に珍しいことではありません。超問題作だとビッグマウスな宣伝をしながら、内容はほとんど無いです。総会屋雑誌の社長インタビューの域を何ら出るものでは無い。実は私は、外出する時に、文藝春秋のこの記事だけ切り取って出掛けたんですよ。読んでいたらあまりに中身が無いので、ひょっとして後半部分をそっくり忘れたのだろうかと思って帰宅してから再度チェックして見たのですが、どうもそんな感じじゃ無いんだな。これで全部だった。

 最後にこういう下りがある。
「お描きになるものが、無学な私には銀行カレンダーのようにしか見えない、としても」

 正直、私は、この「超問題作」を「銀行の待合室で暇潰しに読むには最良の読み物だな」と感服した次第です。実はこの当たり障りのない文章を書くというのは、とても才能を要求される作業です。こんなに優れた才能をお持ちであれば、一般紙が全滅しても、企業の広報誌や総会屋系雑誌でもいくらでも稼げることでしょう。

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◆溝口敦『食肉の帝王 巨富をつかんだ男 浅田満』(講談社):人物ルポと
しては現代日本に希少な大物に挑戦。読み物として中盤まで飽きさせない。が、
存命かつ現役の浅田満に取材を申し込んで断られそのまま対面もせず人物もの
を書くのは、タブー領域だからではなく単なる著者の工夫のなさに起因してお
り、作品の幅を広げられていない。BSEに関わる疑惑にも章を割いた同時代
性は買うが、疑惑どまりで、報道の枠を出ていない。69点。
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 これは、最新のメルマガでの、「ライバル」のお一人に関する「選評」です。
言うまでもなく、ご自身の名誉に関する問題、それも公金詐取という重大問題で、電話一本の取材にすら応じようとしないご立派なお人に言えた義理じゃないでしょう。

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コメント

>警備の見直しが
一応やってるみたいですよ。近所の空自、フェンスをコンクリの塀に改修中。15の空吹かしが車から見えていたのが寂しくなるっす。
年度末より前?からだから北対策?いまさらだと思わないでもないですけど。バスからは丸見えかも。

投稿: とも | 2004.04.15 20:59

ズッコケ3人組ですが、解放されちゃったみたいです。
ファルージャでの停戦が続いてるみたいなので、米軍と犯人
グループとの間で交渉でもあったのでしょうか?

投稿: Y-MAT | 2004.04.15 22:42

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鷺沢萠(さぎさわめぐむ)のエッセイ集。1992年と1997年と2002年の三つのパートにわかれている。 寮の食堂に小さな本棚があって、自由にもちだしができる。男 [続きを読む]

受信: 2008.05.02 20:25

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