教育に於けるナショナル・ミニマム
※ 日本の教育予算は最低の水準?
すでにいろんなニュースがリンク切れになっているので「日本の教育予算 OECD」でググって下さい。下記はNHKです。
「これは、OECD・経済協力開発機構が、平成14年から15年の世界30か国の教育に関するデータをまとめた結果、わかったものです。それによりますと、公立の小中学校や高校の教員の人件費や施設整備費など国や地方自治体が教育にかける予算は、13兆6400億円で、GDP・国内総生産に占める割合は2.7パーセントでした。これは、OECD加盟国の平均を0.9ポイント下回り、トルコとギリシャに次いで30か国中3番目に低く、最も高いアイスランドのおよそ半分となっています。また、1クラスの人数は、中学校で34人、小学校で28.6人となっていて、いずれも、韓国に次いで2番目に多くなっています。これについて、文部科学省は「各国の状況を参考にしながらより充実した教育体制を整備していきたい」と話しています。 」 09/13 21:09
この順位自体には、実はあまり意味は無いんですね。GDPが大きければ、それに照らしての個別の予算規模なんて実は知れているわけで、実際は、物価平準に照らしての金額を比較しなければ意味は無い。その証拠にアイスランドが一番なのは当たり前の話。でもたぶん、日本の教師の給料なんて世界1、2位でしょう。
週刊ダイヤモンドの最新号のコラムが、この教育費問題を扱っていて、小学校高学年から塾通いさせて中学受験させることのコストを400万円とか書いてあるんですが、これは本当にそんなに掛かるんでしょうか。
教育はナショナル・ミニマムだから、国で教育費を見るべきだというご意見です。実は私は、最近これを疑っていまして、本当にそうだろうか?
仮に義務教育がナショナル・ミニマム(国家かが最低限国民に保障すべき公共サービス)だとしても、高等教育は違いますよね。全員が灘校や東大に行ける訳じゃないし、ましてや、社会はそうすることを欲しているわけでもない。本来、そのコミュニティに大工が必要なのに、全員が灘校に行っても仕方ないでしょう。そこにナショナル・ミニマムは無い。そこで必要なのは、徒弟制度による職業訓練であり、ドイツのようなマイスター制度かも知れない。
残念なことに、日本という国は、義務教育に何を求めるのか? という議論を置き去りにして、この予算を誰が面倒みるべきか? という話に至っている。でもそれは、コミュニティによっても違うだろうし、まして家庭によっても違うでしょう。百人の親それぞれが、学校に求めるものは違う。
しかし一方、いわゆる世間という意味で言えば、それはもうはっきりしていて、生徒の偏差値を上げてくれるのが、良い学校、理想的な教育ということになる。でもこれにした所で、日本の義務教育(偏差値)水準が、北欧並みの世界一になった所で、実利はあまり無いわけですね。全体のレベルアップが出来た所で、東大の枠が増える訳じゃないんだから。
そうすると、たとえば都会のように、私立が一杯あって、なぜか公立の偏差値が低く、そこに行かなければまともに大学受験できないという所を除けば、予算不足に陥るかも知れない地方の問題というのは、結局は、都会の有名大学に子供たちを入れるためには、公立で我慢するしかない。その公立のレベルを維持するためには、金が必要だという程度の論理でしか無いかも知れない。それはそこで暮らす人々全体の合意事項かと言えば、それもたぶん違うでしょう。
一方で、予算の多寡に拘わらず、その地域地域で、優秀な子供たちをピックアップして、都市部の公立進学校に入れて、有名大学に合格させるという仕組みを、古くからシステムとして確立していた地方もある。私の田舎がそうです。種子島なんて所からだって、優秀な子は、親がどんなに貧乏だろうが、東大に入れるシステムを、地域社会が構築していた。それはお金の問題じゃないんです。コミュニティの姿勢の問題です。
もちろんそこには、教師がボランティアで補習授業をやったりの努力はあるわけですけれど、それは予算の問題と直結するんだろうか? というと、ちと疑問なわけです。
現状で問題なのは、経営判断として、明らかにコスト高に陥っている郡部の高校や分校をどうするか? という話ですよね。いま長野が揉めているように。予算を減らすしか無いのであれば、どこかで、そういう所を切りたいと思うのは当然のことでしょう。生徒は別に偏差値が高いわけでもないし、有名大学に合格して、教師の達成感を満たしてくれるわけでもない。うちの親父は僻地ばっかり回っていたけれど、できれば教師だって本社勤務したいですよ。
ただ、この十年間、その整理統合をやってのけた鹿児島の現状を見ると、明らかにその地域社会のプライドを傷付けたし、恐らくは過疎化にも拍車を掛けることになったでしょう。私は、それを残すための解決策をもっているわけではないけれど、教師の頭数の問題で済むのであれば、ネットワークを使っての遠隔授業という手もある。
再度、ナショナル・ミニマムの話に戻ると、少なくとも高等教育にナショナル・ミニマムは無い。それは所詮、県レベル、地域社会レベルでの話です。今、地方が怯えているのは、小中学校で差が出やしないのか? という話で、週刊ダイヤモンドのコラムニストは、教育に纏わる様々な規制やガイドライン、教科書の選定問題等をまず撤廃すべきではなかいか? と訴えていらっしゃるんだけれど、それとて実は予算の問題だったりするわけですね。
地方公務員の給与は、見事に横並びの時代が長らく続いたけれど、恐らくこの後の十年で激変するでしょう。国家公務員の給与も、勤務地で大きく差が出るようになるはずです。そんな中で、東京の先生と比べると半分の給料だけれど、それでもこの仕事を続けたいという環境を育める地方だけが、コミュニティ・ミニマムな成果を上げられるんだと思う。教育問題に限らずに。
※ http://chinalifecost.seesaa.net/
↑上記のURLは、勝つぁんスレで拾ったのかな。非常に面白い日本人観ですね。ペーパーの出版物だと、たとえ創刊雑誌であっても、そこに名を連ねる人々は、業界的には知られている人々であったりして新鮮みに欠けるんですが、その点ネットの中にはまだまだ無限の才能が潜んでいる。
※ 在外選挙権の制限は違憲 選挙区投票認める 最高裁判決
http://www.asahi.com/national/update/0914/TKY200509140215.html
当たり前のことですよね。こんなの最高裁で判例が出なければ動かないという旧態依然とした所をこそ改めて貰わなきゃ、改革なんて言えんでしょう。
※ 長寿番付19位の110歳女性、40年以上行方不明
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050915-00000401-yom-soci
これ自体、事件の臭いがするわけですが、問題の本質は、年齢だってプライバシーなんだから、果たしてこういうことを公にすることが適当かどうかですよね。何か、行政は民間にばかり個人情報保護を押しつけ、年齢とか稼ぎとか、最も尊重されるべき個人情報を率先して公開しているという事実に気付いて欲しいもんだが。
※ 記憶力向上に「難問」が良薬?…東大がマウスで解明
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050915i101.htm
この歳になると、記憶したい物事より、忘却の彼方に追いやりたい出来事の方が多かったりするんだが。
※ 【中国】大陸メディア:香港DL、客の「下品な行為」批判
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050914-00000006-scn-int
かの国で、客の不作法がこの程度で収まっていることに、私はむしろ驚いているわけだが。
* 水曜お昼。打ち合わせで電車に乗る。ニコタマで急行に乗り換えたが、凄い熱風。典型的な台風一過の暑さ。8月下旬、気象予報士がテレビで、この暑さも9月の第一週一杯と言っていたのを思い出す。
台風と言えば、週刊読売今週号の小田嶋氏のコラムが、丁度CX木村キャスターの奄美@台風現場レポートを扱っていた。私もあれは、チャンネルを捻った瞬間にドン引きしてしまった。いくら何でも、木村さんをああいう現場に出しちゃ拙いでしょう。現場も選ばなきゃさ。週刊読売は、総選挙レポートのため、来週号は月曜ではなく明日発売になるらしいので、お早めに。
※ メルマガおまけ 新手のスキマー
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コメント
師範学校の昔はシステムとしてナショナルミニマムが教育に求められました。いっぽうで、児童数の減少で、また学生側のニーズもあって、ゼロ免の教育学部が生まれ、それが総合科学部とか云う名前で、教養課程や理学部・文学部と融合されています。
「この仕事を続けたいという環境を育める地方だけ」
純粋な教職課程を維持できる地域だけ、という事になります。
教職課程に県の独自性を盛り込むか、採用した職員に職場研修で、盛り込むか。それにも予算が必要になります。
投稿: sionoiri | 2005.09.15 12:37
>CX木村キャスターの奄美@台風現場レポート
4年前台風が来たときは荒れ狂うお台場からレポートしてましたよ。本人もかなりイラついた感じでレポートしてたのを覚えてます。
その台風レポートに相当イラついてたのかその夜の同時多発テロの特番の時に木村が暴走する事態に・・・
投稿: 悪党の最後の逃げ場 | 2005.09.15 12:42
台風現場レポートは趣味だと、木村キャスターのインタビュー記事に書かれていました。
投稿: | 2005.09.15 12:48
地方の狭いコミュニティで生きている人の本名を晒すなんて、ひどくありません?
漏れも共犯か……
投稿: | 2005.09.15 13:02
鹿児島の教育システムは今の時代でも昔のままで薩摩の息吹を感じます。鶴丸高校みたいに学区に拘らず、全寮制の公立進学校は、もう他県にはみられない運営方針だと思います。でも、これが地方自治でしょう。離島や僻地をかかえる県では、こうでもしないと才能は埋もれてしまいますよね。
教育費に掛ける予算の意見に関して基本的には私も大石さんの意見に賛成です。ひとつ加えるとしたら、公立学校に行っている場合、例えば高校だと授業料は年間に20数万円辺りですが、私学はこの二倍か三倍か、あるいはそれ以上ですよね。同じ税金を納めているのに、この格差はどうかなぁと思います。馬鹿高い私立校には、基本的にお金持ちしか行けませんから省くとしても、公立高校と併願する私学高校のようなところとの授業料の格差はある程度、通学者に補助すべきではないかと
思うのですが。文科省にそれを云えば既に私学助成金を負担しているというのでしょう。確かに、最近は削減されたとはいえ、私学の収入の半分は助成金で賄われているのが普通ですから。それを貰っておいて、入学金だ寄付金だ、施設費だというのはどうなんだろうと思います。それに見合うだけのサービスを提供していない学校もまだまだ多いですし。学校法人は収支がガラス張りといわれてますが、人件費の中にかなりに水増しをしているのも事実で、そうでない甲子園なんか出てこられません。(一回の出場で最低一千万円は必要。北海道・沖縄だと二千万円)通学者の保護者には、私学補助金券を発行して学校に提出すれば一律20万円分を補助とかいう制度を出来ないものですかね。無論、学校の便乗値上げは監視しないといけないですが。
つまり、公立学校は表に出ていないだけで大変な人件費と運営費を使って公教育をしているんだということも納税者として我々は認識しておかないといけません。タダだと関心がないのが大きな盲点です。
投稿: 孔子 | 2005.09.15 13:21
鹿屋市のお話でした。
http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-050913-0039.html
投稿: | 2005.09.15 13:27
郵政の後は農協、最後が教育でしょ
投稿: | 2005.09.15 13:29
>全寮制の公立進学校
これこれウソ書いちゃダメよ。鶴丸には確かに地方から下宿して通う子はいるけど、全寮制なんかじゃない。
つか全寮制の高校など鹿児島にはありません。
投稿: | 2005.09.15 14:11
亀井静香って、客室乗務員に関してだけは大石さんと同じ意見のようですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%80%E4%BA%95%E9%9D%99%E9%A6%99
投稿: | 2005.09.15 15:27
これからの世の中、有名大学に入っても賃金がたくさんもらえるようになるのは一握りなわけだから、普通の子供に教育でお金かけても仕方ないと思いますが。
私なら、公立にも入れないなら手に職付けろと言いますけどね。
才能があるけど経済的学べない言う場合は、当然奨学金なり手を差し伸べるべきですが。
投稿: Za | 2005.09.15 17:34
いつも、先生のブログを楽しく拝見しております。是非、先生にお伺いしたいことがあります。
○政治体制についての先生のご意見
自民党はお嫌いなようですが、国政に関しては、どのような基本方針が良いとお考えでしょうか。また、長野の将軍様が話題に上りますが、地方自治(特に首長)に関しては、どのような姿が理想だとお考えでしょうか。
このほか、税制改革などについては、どのようにお考えでしょうか。
○科学技術に関する投資
以前、中国が有人衛星を打ち上げた際、「我が国も青少年に夢を与えるために有人宇宙計画を推進した方が良い」といったご意見を掲載されていたと思います。私のような素人が言うのも変ですが、現在、我が国の国家財政は疲弊していると思います。仮に、宇宙計画を推進する場合、予算措置はどのようにお考えでしょうか(民間への解放も含めて)。
もしかしたら、ブログやオリジナルのサイトを最初から見ればわかるのかもしれませんが、是非、先生のご意見をまとまった形で掲載していただければ幸いです。
投稿: 千葉の住人 | 2005.09.15 20:16
「教育」で思い出すのは、先日選挙で大勝した法螺吹き首相の座右の銘「米百俵」ですな。
「もらった米を食べず、子弟の教育費に使う」というハナシのはずが、「米を今日食べない」という部分だけを実現した。
投稿: Inoue | 2005.09.15 21:23
大石センセは1960年代最初の生まれ、ちょうど自民党へのアンチテーゼで燃える世代の最終集団かも。三角大福中が権力闘争をしていた時代に思春期を迎えた年代で自民党が熱かった。
それ以降は藤吉郎竹下、三本指の宇野、秘書がやりました宮沢と、自民党がぬるく陰湿になってしまいには下野したから、その後の世代は自民党に対して特段の敵愾心を持たないとか。
いかん、熱があるせいか文章がうまくなってないかも。
投稿: | 2005.09.15 21:25
小泉の存在はまるで老子のようだ。
客観的にまともに評価するやつはまともな評論家に見える。
上手に賛美するやつは翼賛工作員に見える。
意味ありげに賛美するやつはアンチ工作員に見える。
穿った見方をするやつは偏狭に見える。
投稿: | 2005.09.15 21:28
康夫の存在はまるで老子のようだ。
(以下略)
とか言い出すやつをみたら「なるほど、私は翼賛工作員ですという自己紹介ね」となるわなあ。
投稿: | 2005.09.15 23:58
宇宙開発は、ある意味「安全保障と技術のための必要経費」と思った方がいいなあとか思ったり。
投稿: | 2005.09.16 17:45
有人宇宙船を打ち上げた特定アジアの某国へのODAを減らせば予算はある。JAXA衛星打ち上げビジネスへの財投機関債として国民に一般公募する方法もある(ビジネスがうまくいけば返済される)。
投稿: えの | 2005.09.17 00:34