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2006.07.07

危機管理の要諦

 慈恵医大の前立腺癌の手術の話ですね、小児科医さんから昨日二回コメントを頂戴しましたが、まやっぱり腎臓と前立腺は別物だと思うわけですよ。こっちでどれそれの技術を持っていたから……、という認識が、果たして医者の間でも普通なのかどうか、ちょっと疑問に感じます。

 この事故で致命的だったのは、輸血が遅れたことなわけですが、これは医療ミスでは無いのか? 危機管理の観点から言えば、内視鏡手術に拘わらず、手術中に患者が死ぬケースのかなりは異常出血ですよね。日本ではそもそも病院に血が足りない、輸血を十分な量確保できない、という現実はさておき、日本中で毎日、何万件も手術があって、それで患者が不幸にして一定数死んで、でも、それが異常死として届けられるケースは、それでも多くはないわけです。
 それはなぜかと言えば、やっぱり医師なり病院側が、そういう異常事態に備えて、異常死を防いでいるからで、慈恵医大のこのケースで言えば、医師の側にも病院の側にも異常事態に備える危機管理が無かった、その意識が希薄だったから、こういう結果を招いたわけで、一般論として言う所の「手術に失敗は付き物」「高度な術式で失敗のリスクはあった。それは患者側も承知しておくべきだった」というのとは、微妙に違うような気がするんですよ。

 この事件から反省すべき事は、医師個々人の技量頼みで、それをバックアップするシステムが院内に存在しなかったこともそうだし、術式を途中で切り替えるルールブックも存在しなかったことですよね。ぶっちゃけ、危機管理のマニュアルが一切どこにも存在しなかった。そういう環境下で先進医療が開拓されているということに問題があったのだと思うわけです。

※ ミサイル発射、世界のメディアは
http://www.asahi.com/international/update/0707/007.html

 米軍は、今回、正直、ポカやったんだと思います。嘉手納にいた偵察機を肝心な時に飛ばせなかった。コブラボールも、果たしてテポドン2に間に合ったかどうか疑わしいですよね。キティも小樽から出なかったし。
 一方で、自衛隊は、アレを掴んでいたこれも察知していたで、大ポカは防げた。
 今回の反省点としては、北は心理戦に長けた国ですから、思えば、記者団を平壌に招待して、万景峰号は入港するわ、で、まさかそんな時には打ち上げないだろうと思うわけです。たぶん北朝鮮ウォッチャーは、あるとしても、日本の記者団から平壌から出て、万景峰号が新潟から出港した後じゃないか? と睨んだはずです。米軍の情報当局者も、そこの辺りを判断して、ID4に発射は無いと判断したのでしょう。
 この国と付き合う上で、心理戦に対応するスキルを更に上げる必要があることを再認識させられた一件でしたね。

※ 違法免除・猶予19万人に 国保不正で社保庁調査結果
http://www.asahi.com/life/update/0706/005.html

 19万人なんていう数字は、地方事務所単位じゃなく、国レベルでの指示がなきゃ出来ない数字ですよね。
 昨夜の報ステだったかな、以前取り上げた、年金を払っているのに、未納状態になっているケースをレポートしていましたが、1984年の完全オンライン化の時の、ペーパーからのデータの移し替え入力時に、入力ミスによって、宙に浮いた年金情報が万単位で存在するらしい。それは、データ管理している方には、誰が払っていた分からないけれども、以前に払い込まれた、契約者不明の入金が、億単位で存在するということなんですよね。
 なんでこんないい加減な組織が出来あがってしまったのだろう。

※ 九州新幹線:土砂流入で運転見合わせ 川内-鹿児島中央間
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060707k0000e040011000c.html

 いや、これテレビで観ると、トンネルの出口にもろに被っているんですよね。昼間でなくて良かったですよ。
 垂水市で被害が拡大していて、たぶん台風が近づいているので、また来週も土砂崩れ被害が続くんでしょう。昨日、テレビを見ていたら、ヘリの空撮映像で、土砂崩れ後の地表付近にポツポツと横位置列に孔が並んでいるんですよ。防空壕の跡ですね。
 で、市民全避難とか言っていたので、みんな逃げたのか? と聞いたら、いやぁ、あの雨の中外出る方がよっぽど危ないからみんな家の中にいたよ、という話でした。
 ただ、数日前に雷が近所に落ちたらしくて、電話、車庫の電動シャッター、風呂のボイラー等が殺られて、とんでもない修理代になったとか。

※ 米商務省:オランダの貿易会社に制裁措置
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20060707k0000m030187000c.html

 これ気を付けないと、オランダという国自体が、もともと無節操な国ですから、それに国が小さい、規制が緩い、諸外国から目を付けられないということで、この手の不正を企む連中から散々踏み台として利用するんですよね。
 オランダ、私がヨーロッパで唯一好きになれない国です。

※ 「日本海に落下した?」 ヒル米次官補の荷物紛失
http://www.asahi.com/international/update/0707/005.html

 でもこれ、アメリカの空港内でのロストバゲージなんですよね。中国に責任はない。

※ メルマガおまけ 絶体絶命 海難事故

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コメント

>宙に浮いた年金情報が万単位で存在するらしい
厚生年金でも重複なんてザラですからね。学生時代に資格取得し、就職して新規でまた取ってる。国民総背番号制みたいのは昔から取り沙汰されてきたけど、その度に左巻きのひとがチャチャを入れる。公的サービスを期待すればある程度のプライバシーの開示はさけられない。今話題になってる社会保障番号制度に移行すればお上任せだった負担と給付の情報を個人が把握しやすくなるんでしょ。社会保険庁だって税務、健保など横からオマエの所はいい加減だって文句つけられていれば少しはまともになったでしょうに。

投稿: TOソープランド | 2006.07.07 13:45

>宙に浮いた年金情報が万単位で存在するらしい

前から思って居たんだけど
最近特にその思いが強くなりつつあります。

ぶっちゃけ国家規模ってだけの
ねずみ講なんじゃないかと。

投稿: M | 2006.07.07 15:26

>その度に左巻きのひとがチャチャを入れる。

潰したのは裏金がばれると思ったのか金丸など自民党の連中。また以後の背番号制への反対者も桜井よしことかいたりする。

投稿: dada | 2006.07.07 18:44

日本社会党や多くの市民団体は、国民総背番号制反対の急先鋒だったように私も記憶しています。

投稿: s_doi | 2006.07.07 19:55

>北は心理戦に長けた国ですから、

 うーん、金ドン国が旧ソ連か中国程度にまとも国だったらそうかも知れない。しかし、金ドンとこは、権力を掌握した最高指導者が、政軍部に対して権力を通わして心理戦を行っているというのは、本当は買いかぶりかも知れない。
 暴れん坊将軍自身は気まぐれで行き当たりばったり、おまけにどこまで権力が掌握できているのか疑わしく、お庭番役の秘密警察機関も、ある時は保衛部、ある時は軍憲兵、ところころ変えている。これは、部下が全然信頼できていない証拠。何時寝首をかかれるか、心配でならないだろう。
 軍部は軍部で、外交部は外交部で、工作機関は工作機関でバラバラなことをやっている。これが、外側からは心理戦に見えるだけで、実態は、今次大戦突入直前の我が国の遥か上を行く、国家戦略の分裂と錯誤を繰り返しているだけじゃないのか。
 金ドンの酒量はますます増えるだろうが、とっとと糖尿病の合併症を併発して欲しいもんだ。それが東洋平和への早道だから。長生きすればするほど、末路は悲惨だぞ。

投稿: 土門見人 | 2006.07.07 23:38

前に言っていた例の薩英戦争のNHK番組ですが、国旗の上下を間違えるということが
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060706-00000165-jij-soci
言われてみて初めて上下があるということに気がつきましたよ
NHKさん、ありがとう

投稿: | 2006.07.07 23:38

日本の国旗にも上下も表裏もある。

投稿: | 2006.07.08 05:16

>垂水市で被害が拡大していて~

先生のお身内の辺りはそこそこ大丈夫でしたが、一部の地区では死者の出なかったのが不思議なくらい。
ああいう山の中の小さな集落は集団移転すべきだと思います。
人が居なきゃ災害も起きないし、60人ぐらいのために4、50億もの税金を投入しなくてもよい。

投稿: MURA | 2006.07.08 10:28

腎臓と前立腺は別物だと思うって、そりゃ別物ですよ。でも泌尿器科は、両方とも手術するわけですよ。
この医師だって、腎臓の手術も前立腺の手術も開腹術でならいくらでも経験があるわけです。
ましてや、泌尿器科は膀胱鏡を用いた手術も数多くやっていて、外科系の医師ならば内視鏡下での手術は経験があるほうなわけです。
つまり直接手で行なう手術だけではなく、遠隔的な内視鏡下でやる手術にはかなり習熟しているわけです。

そういう人を印象批判で学生扱いすることは、全くもって間違いです。
それはテポドンを固体燃料とする間違いと一緒で、泌尿器科の仕事を理解していない。
そういう間違った前提を積み上げて、正義の怒りをぶち上げても、我々からは要するに日本人の患者には新しい治療はするなということなのだなというメッセージしか受け取れません。

例えば、外科が甲状腺の手術をやって、腹部臓器と甲状腺は別物だからおかしいといいますか?
でも現実には甲状腺を手術する外科医はそこそこいますよ。
乳房と腹部臓器は違うから、外科医が手術するのはおかしいといいますか?
耳鼻咽喉科が、眼底骨折をさわるのは?
脊髄をさわるのは、脳外科?整形外科医?
15歳の人は小児科?内科?
女性の腹痛は、婦人科? 内科?
子供が割り箸を口蓋に突き刺したら、それは小児科? 耳鼻科? 脳外科? 口腔外科?

疑問に思われるのは、人間として正しいですが、いやしくも物書きなら泌尿器科について調べてから書いていただきたい。
少なくともマスコミの末席に連なる大石氏なら、それが責任というものです。文筆業において素人ではないのですから。

投稿: 小児科医 | 2006.07.08 11:38

> つまり直接手で行なう手術だけではなく、遠隔的な内視鏡下でやる手術にはかなり習熟しているわけです。
その割には内視鏡での手術時間と開腹術に移行した後の手術時間が違ひすぎるやうな気がしますな。
私は素人なので見当外れの疑問かもしれませんがね。

投稿: 綠犀淨庵 | 2006.07.08 12:08

 それはなかなか、額面通りには受け取れないですよね。
 結果的に無視された院内の規定があり、その器具のメーカーのエンジニアが立ち会い、複数の医師がああでもないこうでもないと検討しながら手術し、結果として患者は死んだ。
 その事実を見る時、あの臓器もこの臓器も似たよなものだという認識が医学界に一般常識として存在するなら、その認識自体、改めて貰う以外無いと思いますよ。患者の側としては。
 やったことのない術式に関しては、学生並みだという謙虚さを持って貰わないと、ちょっと困ると思うんですけれどね。それはその術式を普及させたい専門家にとっても。

投稿: 大石 | 2006.07.08 12:58

綠犀淨庵様、その疑問はもっともです。

だから確かに腎臓と前立腺は別物でもあるわけです。そう簡単にはいかない。
私が言っているのは、全くの素人扱いは、不適当だといっております。そこは間違えなきよう。

開腹したらそれは経験があるから簡単です。指でさわってダイレクトに手術ができるので、時間も早いわけです。むしろ開腹すれば早いというのが、普通の泌尿器科としては水準の技術を持っていたという証明になります。
泌尿器科として普通の前立腺手術は問題なくできる。しかしそれでは技術は進歩しない。
前のエントリーに書いてあった通り、報酬以外の動機が働くわけです。
技術を高めたいと。
内視鏡というものはやはり難しいものであるわけです。ですが、技術を確立すれば患者への負担は大きく減るわけです。
技術を高めれば、自分の価値もあがるわけです。
むしろ大学病院でしかできない先進医療を行なって、自分を高めていかなければならないというインセンティブが働くわけです。
大学病院というものは、普通の手術を当たり前にするだけではダメで、研究をしたり、ほとんど誰もやってないような治療を試みたり、とんでもなく珍しい病気や普通の病院では手に負えない病気を見たりする役割の研究機関附属の病院なわけです。

一般の人は大学病院を室が高い病院だとしか認識されていませんが、あそこは研究と実験が主体でついでに教育目的もかねて病院をしているわけです。
大学病院の患者は人体実験か研究材料か、さもなくば教育材料か、そういうものなのです。

逮捕された医師は、素人ではありません。
ただ少し難易度が高い冒険に挑んだということなのです。
そして患者を実験材料にするなという批判は確かにその通りですが、医学の歴史が患者を実験材料にし続けて進歩した悪夢の学問でもあるわけです。
そして日本でそのような新規医療を禁止すれば、外国の患者が実験台になるだけです。

皆様には悪いですけど、日本人は、他国の患者を実験台にした成果と他国の患者の臓器を金で奪い取って、医者や看護婦の人間らしい幸福を取り上げ、国の金で健康を保障してもらって、それを当たり前と勘違いしている世界最悪の幸福者です。

投稿: 小児科医 | 2006.07.08 13:18

教えてほしいのです。
ただの一般市民が、医療ミスや、初見の手術(ヘボ医者、と仲間から指摘されるような手術)で死なないためには、どうしたらよいでしょうか。

医療制度がどうあろうとも(それは、別問題として)、手術で死んでしまったら、個人としては、おしまいです。
お医者さんの評判や履歴、手術歴を調べる方法があれば教えていただければありがたいです。
やっぱり、患者の評判(混交玉石ですが)、人脈(遠い親戚の医者にツテを頼るとか)、お金(医者と婦長に現金手渡し?)なんでしょうか。
なんだか、ジイちゃんバアちゃんに聞いた昔々の入院話(戦中・戦後や高度成長期ごろ)の世界から変化ないようで残念に思います。

ヘボ医者にかかって死ぬのは、誰でも御免だと思っていると思うのです。ここで意見を書かれているお医者様方はどうやって、御家族の入院先・手術先を決めていらっしゃいますでしょうか。

投稿: 教えてください | 2006.07.08 13:20

>患者を実験材料にするなという批判は確かにその通りですが

 世間が、こういうステロな反応をするのは致し方ない所で、今回なぜ司直の手に掛かったかと言えば、その実験的な試みにしても、手順無視が酷すぎやしませんか? ということですよね。
 実際に抗癌剤等でも、バタバタ死ぬわけですけれど、普通はそれで医者は捕まらない。それは患者合意はもとより、一応の管理の下で実験的医療が行われているわけで、この慈恵医大のケースでは、事件発覚直後、いろんなキーワードが一人歩きして、検察側を有利にしたけれど、話半分にしても、事実関係のみは残ってしまう。患者の側からすると、あるいは素人目にしても、その辺り、許容範囲を超える部分が多すぎたと思うんですよ。

投稿: 大石 | 2006.07.08 13:45

>医者や看護婦の人間らしい幸福を取り上げ、

国の金で地位と給与を保障してもらって、それを当たり前と勘違いしている世界最悪の幸福者ですね。

投稿: | 2006.07.08 13:48

>>小児科医さん

>>ただ少し難易度が高い冒険に挑んだということなのです

 百歩譲って「実験」ならまだしも、お願いですから生身の患者を使って「冒険」なんてしないでいただきたいのですが。患者の身体を医者が好き勝手にしていいものではないでしょう? その患者が「医学界の発展のために私の身体を使って下さい」とかなんとかいう発言をし、同意書なりを書いていたとかいうのならともかく。

 あなたの書き込みを読んでいると、身内を庇うあまりに患者の視点がすっぽりと抜け落ちているように感じます。

投稿: KWAT | 2006.07.08 13:54

国民総背番号制反対の急先鋒だったのは自民党でしょうが。
農業を含む自営業の所得捕捉率を上げたら選挙で困りますからね。
こうやって何でもかんでも左のせいにするのにはいい加減飽きたんですが。そろそろ誰か新しいトレンドを作ったらいいのに。

投稿: | 2006.07.08 14:08

国民総背番号制反対の実質的急先鋒だったのは他ならぬ自民党でしょうが。
農業を含む自営業の所得捕捉率を上げたら選挙で困りますからね。
こうやって何でもかんでも左のせいにするのにはいい加減飽きたんですが。そろそろ誰か新しいトレンドを作ったらいいのに。

投稿: | 2006.07.08 14:11

>小児科医様
丁寧なレス有難うございます。

>一般の人は大学病院を室が高い病院だとしか認識されていませんが、あそこは研究と実験が主体でついでに教育目的もかねて病院をしているわけです。
>大学病院の患者は人体実験か研究材料か、さもなくば教育材料か、そういうものなのです。
ここまでについては全くその通りだと私は思ひます。たとへば扁桃腺炎で大学病院に駆け込んで「何とかしてくれ」と頼んだ結果、薬を塗るだけで軽快するのに扁桃腺を丸ごと摘出されたところで私は別に問題だとは思ひません。そりや事前説明と患者の同意は必要でせうが。

ただ、
>逮捕された医師は、素人ではありません。
>ただ少し難易度が高い冒険に挑んだということなのです。
冒険に挑むのは大学病院の性質からいつて一向に構はないと思ひますが、難易度が自分には手に余ると判断した段階で「引き返して別の道をとる」必要があつたのではないでせうか。闇雲に突撃するのは冒険とはいへないと思ひます。
「過失」が認定されたのはさういふ自己の技量と患者の状態についての判断の誤りについてではないでせうか。それこそ「素人」ではないのですからその判断を誤られては話になりません。そして手術室には止める仕組みがなかつたこと(麻酔科医が止めるまで内視鏡手術を続けた)がシステムとして問題ではないかと。

>皆様には悪いですけど、日本人は、他国の患者を実験台にした成果と他国の患者の臓器を金で奪い取って、
「医者や看護婦の人間らしい幸福」といふのはどういつたものかわからないので論評は避けますが、ここの部分はきつい表現で耳が痛いですが全くもつてその通りだと思ひます。

投稿: 綠犀淨庵 | 2006.07.08 14:12

教えてください様

医療ミスや実験台にならない一番の方法は、医師の診療を受けないことです。
2番目は医師の親友や身内をつくること。
3番目は自分で勉強することです。

同僚の医療のレベルを知るのにも医学、統計学や日々の細かい勉強が必要です。
これ以外にここで教えられるような名医をみつける方法があれば、日本人全員がすでに試みているでしょう。

手術が必要になったら私は、同僚に任せます。
実際、妻の手術の時は一切口出しをしませんでした。私としては彼らのプロフェッショナルを信じていますし、信じざるを得ません。選択肢はあるようでないのです。
重大な病気になったら、医者にかかるか、自分で治すか、神様に祈るか、しかありません。

ミスの無い医療はありません。
死なない人間もいません。
だから助かる助からないは時の運です。
しかし幸い、死に方は選べます。
医療ミスで死にたくなければ、医療を受けなければ良いのです。
アガリスクやメシマコブが効くかもしれません。アレフでヨガをやれば治るかもしれません。何もしなくても治るかもしれません。
どうぞ、選んでください。患者様には選択する権利がございますから。

投稿: 小児科医 | 2006.07.08 15:19

大石様
青戸病院の逮捕された医師の、手順無視に関しては、反論をいたしません。
彼らにはもうすこしましなやりようがあっただろうと思います。

ですが後段に関してはいろいろと反論があります。
まず抗癌剤で人が死ぬのは悪ですか?
なにか勘違いされているかもしれませんが、抗癌剤を使わないと、まず100%死ぬような癌という病気にかかっているからこそ抗癌剤を使うのです。
使わなければ死ぬ。使っても7割は死ぬけど3割生き残る。そういう薬は悪ですか? しかも使わないという選択肢は常に残されているのですよ。

大石様のお子さんが白血病にかかって、今まで標準療法で使用してきた抗癌剤が効かないときに、日本では認可されてないけど、効くと言う報告がある抗癌剤がある。けれども新薬のそれは40%に心不全を起こして、患者を殺すことがある。
それでも大石様は、抗癌剤は人を殺すから使わないといえますか?

新聞もBLOGもTVも毎日バサバサと人を傷つけて商売していますが、誰も名誉毀損で監獄に入りませんね。合意も無い、一方的な非難ですけどね。

許容範囲を超えたのが多すぎるといっても、誰だって自分が実験体になるのは嫌ですよ。
だけど、日本以外は貧しい人が、それでも助かりたくて実験体になっている。
その成果である新薬と新しい手術主義を、日本人はいつも金で手に入れているんですよ。
日本人医師が留学して新しい手術をマスターして帰ってくるというのも、向こうの国の人を実験台、練習台にしているわけです。

その自覚無しに、実験台は嫌だ、遅れた医療も嫌だ、金もできれば払いたくない、24時間いつでも救急は充実させろ、ミスした医者は逮捕、薬の副作用は嫌だと、おっしゃっている。

民意は大事ですけどね、民意の許容できる範囲を超えたから逮捕するってのは、リンチと変らないですよ。そういう民主主義の悪い側面を押し付けても医療が良い方向に変るわけは無い。

自分の期待通りなら聖職、期待を裏切れば人間失格のダブルスタンダードは、いずれ自分自身を痛めつけますよ。

投稿: 小児科医 | 2006.07.08 15:50

KWAT様

それはあなたに施される医療、薬、器具の大半が、日本人以外の人たちや、昔の日本人が実験台になり、屍をさらしてきたその尊い集積であると言うことを忘れているから、そう感じるのです。

だれも実験台にはなりたくないですがね、誰かが冒険をしなければ、あなたはインフルエンザで死にかねない状況だったわけです。
青カビの生成物を体に入れるのがいかに冒険か。
安全第一の医療は簡単ですよ。難しい病気になれば寿命ですね、諦めてくださいといえばいいのですから。
だいたいこんな所で身内をかばって何の得があるのか教えて欲しい。自分の仕事が嫌いじゃないから、不当な批判に耐え切れず反論してしまっているだけです。

投稿: 小児科医 | 2006.07.08 16:02

>まず抗癌剤で人

 私の説明不足だったようですが、ここでいう抗癌剤とは、試験的な、という意味です。
 あるいは、危険性が良く解ってない投薬に頼らざるを得ない患者や医師という意味です。

投稿: 大石 | 2006.07.08 16:06

綠犀淨庵様

この医師達は難易度が手に余るとは判断していなかったのです。実際、このケースは手術は成功したが患者は死んだというケースです。
前立腺は摘出できたのです。本当に素人なら摘出すらできません。
だからご指摘の如く、どこで開腹術に変えるかの判断と事前の説明、事前と術中のチェックとバックアップ体勢、そして術後の管理に問題があったと思います。

過失認定された部分も、ご指摘の通りです。
むしろこの医師たちは、手術のみ、自分の技量をあげることのみに囚われてしまったと思います。
素人じゃないからこそ、その判断を誤ったのが問題というのもご指摘のとおりです。

手術室で止める仕組みが無かったのもそのとおりです。大学病院は、一般病院よりもセクショナリズムが強く、他科のやることには関与しないという姿勢が強いのです。医局講座制の弊害です。

このような冷静なご指摘は、非常に助かります。

投稿: 小児科医 | 2006.07.08 16:22

大石様
ちなみに、手術に器具メーカーが立ち会うのは、別に特別でもなんでもありません。
医師の未熟でもありません。
熟練した医者でも新規の器具を使う時は、説明を受けながら使います。むしろわからないままに使うほうがおかしいのです。
臓器が違えば、器具も大なり小なり変わります。注意点も変わるので、メーカーが立ち会うことは多いのです。
それとああでもない、こうでもないといいながら手術をするのも別に悪いことではありません。

内視鏡術、特に腹腔鏡は基本手技である、結紮(糸結び)切除、剥離(膜や癒着をはがしていくこと)、把持(つまんで持ち上げておくこと)などは臓器ごとの違いはあまりありません。
なにが違うのかと言うと、臓器の特性と内視鏡を通じての見え方なのです。
あくまでも肉眼でみるのと、狭い視野の限られたカメラで、主要血管や尿道を避けて、癌を取り残すことなく切り取るという作業が難しいわけです。

どんな臓器でも一緒と言うのではなく、基本は出来ているから、素人と言うのはふさわしくないと言ったわけです。

とはいえ、件の医師も出来ると思い、現に切除には成功しているのですが、確かに術後のチェックを欠かさない謙虚さは確かに欲しかったと思います。

投稿: 小児科医 | 2006.07.08 16:48

>小児科医さん
>その自覚無しに、実験台は嫌だ、遅れた医療も>嫌だ、金もできれば払いたくない、24時間いつ>でも救急は充実させろ、ミスした医者は逮捕、>薬の副作用は嫌だと、おっしゃっている。

これは言うでしょう。
誰だって実験や副作用は嫌だし医療は進んでいて欲しいし医療ミスは無ければ嬉しいし24時間診療を受けられるのであれば安心だと思うでしょう。

ただこれを言うことと実際に何がしかの不幸が起きたときにそれを受け入れることは同居できる事柄ですよ。
同居しないこともあるが同居することもある。

問題は大石氏が言う様に「患者の自覚が無い状態で被験者扱いされる」事であり、施術に関してのリスクを事前に提示したのか否かの問題のはずです。
その上で患者は可能な限り医師を信じる努力をし、意思は可能な限り全力を尽くす事が双方にとっての幸せと利益につながると思います。

小児科医さんの言う事はもっともな部分もありますが、患者側の人格に対しての要求があまりにも高すぎるようにも見えます。
小児科医さんが「医者は聖人ではない」というのと同様に患者側も聖人ではありません。
医師に聖人としての人格を求めるなと書きながら患者側にはそれを求めるというのは私には少し疑問です。
「お前らこれ以上何を頑張れって言うんだ。いい加減にしろ」
というのをある程度分かった上でさえも。


ついでなので
>だいたいこんな所で身内をかばって何の得があ>るのか教えて欲しい。自分の仕事が嫌いじゃな>いから、不当な批判に耐え切れず反論してしま>っているだけです。
私が以前
「貴方のある種の感情からくる文の構成・言葉の選び方が反発を呼び、それは貴方や医療関係者にとっての不幸ではないか」
と書いた時に貴方は
「この程度で反発する人間はもともと医師に対しての反発心を持っているのであって、私には責はないし問題だとも思ってはいない」
といった返答をしましたが、矛盾していませんか?
もう一度書きますが内容を損失させないで「不当な批判」をさせないような文章を書くことは貴方には出来るはずです。
であれば私はそういう文章を貴方は書くべきだと思うし、誤解や不当な批判によるコストを貴方が回避するためにもそうした方が良いでしょう。
これは媚びろとかそういうこととは全く別次元の問題です。

それはしたくない(自分の感情を優先させたい)、でもコストを受けたくはない(馬鹿な反論を聞きたくない)というのは貴方の言う所の「馬鹿な患者」と同じだと思いますよ。

投稿: 偏頭痛持ち技術者 | 2006.07.08 19:28

偏頭痛持ち技術者様

あなたの言う「同居」できる人が年々少なくなっていることが一つの問題。
同居できる人が少なくなったからこそ、そんなのは幻想で現実をみてみろといいたくなる訳です。

さらに大石氏は青戸の医師を、まったく未経験の学生と比喩したからそれは不適当な例えであり、またコメント欄では人体で実験するなという意見があったため、未経験の医療は全て悪という捉え方はおかしいと今までの反論をしたわけです。
あなたの指摘については、すでに同様の指摘をされた方については、賛同を示しています。

患者の人格への要求が高すぎるというのは、どの点をどのように解釈してですか?

ところで矛盾ですか?
よくわからないですが、私も適当に反発してコメントするけど、私のコメントに反発するのも勝手ですよ。
基本的に大石氏とわかる人にわかればいいと思って書いてます。

て書いて、なんとなく自分の矛盾の理由がわかりました。
私、大石氏のファンだから、氏にそこまで医者を誤解すんなよと思ってしまうのですね。
他の人にどう思われようと、どうでもいいんです。だから私のは、業界の利益じゃなくて私憤です。
でもこれじゃただの迷惑なファンですね。ちょっと控えよう。いけないいけない。

投稿: 小児科医 | 2006.07.08 22:09

>患者の人格への要求が高すぎるというのは、どの点をどのように解釈してですか?

他者に人格を要求すること、それ自体が異状ですよね。

ほんとに社会経験あるのかな?

投稿: | 2006.07.08 22:53

>他者に人格を要求すること、それ自体が異状ですよね。

ええええええええ。
あなたどこの紛争地帯の住人?

投稿: | 2006.07.08 23:43

小児科医様>

ここまでの遣り取りを第3者の目から見ると、どうも議論が噛み合ってないように思われます。メディアあるいは世論一般は別として、ここのコメント欄で発言している人の多くは「完璧な医療」というものを求めてない訳ですよね?あくまで現実的に可能な範囲で最善の医療が出来ないものかと言っているだけで。それを前提とした上で、医師あるいは医学界/医療界の側にミスや欠陥や問題点があれば、現実性を考慮しつつ改善の努力を行って欲しい。少なくても問題が存在するという事実は認めて欲しい、という建設的・漸進的なスタンスではないかと思います。

これに対して小児科医様の仰っていることは「完璧な医療なんてものは有り得ない」「より高い水準の医療サービスを求めるのであれば相応の負担は不可避だ」という点であって、医師ないし医学界/医療界の側の問題認識という面は(相対的に)あまり掘り下げられてないように見えます。

今回の青戸病院の件についても、大石氏への反論(これ自体は御説の通りだと思いますし誤解を解くための反論をする必要性も大いにあったでしょう)についてはともかく、件の医師が犯したミスについてはもっと触れてみても良かったのではないでしょうか。確かに他の発言者の指摘を受けて、

>過失認定された部分も、ご指摘の通りです。
>むしろこの医師たちは、手術のみ、自分の技量をあげることのみに囚われてしまったと思います。
>素人じゃないからこそ、その判断を誤ったのが問題というのもご指摘のとおりです。

>手術室で止める仕組みが無かったのもそのとおりです。大学病院は、一般病院よりもセクショナリズムが強く、他科のやることには関与しないという姿勢が強いのです。医局講座制の弊害です。

>とはいえ、件の医師も出来ると思い、現に切除には成功しているのですが、確かに術後のチェックを欠かさない謙虚さは確かに欲しかったと思います。

という3点の譲歩をしていらっしゃいますが、これらの点こそが一般人側・医療サービスの受益者側からみて不安や不信の種となっているのではないでしょうか。このような患者側から見て病院不安・医療不信を招く問題点(医師の自己過信・大学病院のセクショナリズム・手順無視)について触れないまま、世間の医師観や医療認識ばかり責めていても議論はいつまで経っても噛み合いませんし、建設的な遣り取りに至らずに感情的応酬に終わってしまうのではないでしょうか。

#もちろん、メディアを始めとした医師バッシング・病院バッシングはあまりに不当な言い掛かりばかりですし、その点について義憤あるいは私憤を表明するのは当然のことだと思います。そのような義憤・私憤の表出に対して人格攻撃で応じるのはナンセンスな行為だとも思っております。せっかく医療の当事者側から貴重な生の声が聞けるんですから、それを建設的な対話に出来ないものかというのが私の個人的な願望です。

投稿: 名無し三等兵 | 2006.07.09 16:28

名無し三等兵様

>それを前提とした上で、医師あるいは医学界/医療界の側にミスや欠陥や問題点があれば、現実性を考慮しつつ改善の努力を行って欲しい。少なくても問題が存在するという事実は認めて欲しい、という建設的・漸進的なスタンスではないかと思います。

そおかなぁ。医師パッシングの方がまだ強いような。大石先生にしても、「結果的に無視された院内の規定があり」と「院内の規定」が周知徹底されていたという前提で医師を批判してらっしゃいますよね。

「本当に周知徹底されていたのか」というのはない。

直接の担当者たる医師に目が行く余り、その後の問題に目が行っていないように見えるんですけどね。

例えば、「腹腔鏡手術」そのものの一般化の是非というのは置き去りにされましたよね。「術者が未熟で無謀な手術をやった」ということで。

また、「医師の無謀」と印象付けられているため、「院内規則の徹底」が本当にそうだったかという検証がされず、仮に「徹底するシステム」が不在の場合、同じ様な医療事故を起こすわけですよね。

「人が死んでんねんでぇ」が強すぎる為に、その背後に潜む物が見落とされたまま非難の応報になっているような。そんな感じを受けますがね。

投稿: HISASHI | 2006.07.09 17:40

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