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2008.06.28

山本賞パーティ

 今日は週末ですから、皆さん新刊を読みましょうね。この時点で店頭で見当たらない、という方は、たいへん申し訳ありませんが、ネットでのご購入をお願いします。この辺りの配本状況が今どうなっているのか、ということに関してはいずれ業界の全体状況という形でお話ししたいと思っていますが。

移民の話はまた週明けに
*更新が遅くなりました。昨日歯医者へ行って、さらに山本賞の受賞パーティに顔を出して、帰宅して1時前にやっと寝たら起きたのは12時過ぎでしたorz。

※ 今野敏・山本賞受賞パーティ

 歯医者から帰って、大急ぎで準備を始める。ググッてみたらホテル・オークラというのは電車の便が良くないんだな。銀座線の虎ノ門駅で降りて西へ進むんだが、なかなか真っ直ぐ歩けずに往生する。仕方なく家に電話して地図で誘導させるんだが、これがホテル提供の地図を見て誘導するものだから全く役に立たない。
 二次会まで終えて帰ると、なぜかそこいら中に制服警官が。アメリカ大使館のすぐ隣りなんですよね。

 さて、今野敏という男に関して説明しましょう。私にとって一番古い付き合いの作家ということになりますね。ここ的には、彼のことは私より年上のガノタ、あるいは格闘家としての認識が強いのでしょうが。
 読者のほとんどが知らず、駆け出しの編集者も知ることはないけれど、業界関係者ならみんな知っている、編集者なら知っておかねばならない事実というのがありまして、彼は文壇という村社会の中で一番顔が広い男です。いちばん付き合いの幅が広い。そして事務に明るい。
 言ってみれば文壇庶務課長&総務部長という役割をこの十数年担ってきました。たいがいの疑問点は彼に相談すれば解るし、たいがいの揉め事は、彼が丸く収めてくれます。彼が明日いなくなると、日本の文壇は即座に崩壊します。なんとか作家協会は瓦解するし、パーティの類も開けなくなる。推協のパーティや何やらでゲストを前に司会をするのはいつも彼です。昨日なんていつもの癖で二次会の締めも自分でマイクを握っていた(~_~;)。
 たとえばいろんな文芸の賞があるでしょう。煩雑極まりない段取りがいろいろあるわけですよ。下読みは誰にお願いしようか、選考委員誰にお願いしようか、とか、どこでいつ選考会を開きましょうか、とか受賞後の段取りはこれこれこうで、とか。山のような雑用が、いつの間にか彼の元に集まることになって、でそれは、彼がサラリーマン時代に培った事務処理能力のなせるわざで、右から左へ華麗に処理されていく。彼は自ら作家であるにも関わらず、そういう本来やりたくない仕事を30年やってくれたんです。ほとんど無償で。
 だから冒険作家クラブも、パーティを開く時には彼に日程の確認等をお願いするわけです。いろんな調整もやってくれる。
 賞というのは功労賞ではないけれど、恐らく過去20年、日本の文壇にこれほどの貢献をしてくれた男はいません。百人の作家に訊いたら、たぶん99人までが彼の固有名詞を上げるでしょう。彼無くして文壇ムラは回らないと。
 普通の組織なら、ここに権力とか絡んで、あいつはでかい面をしているみたいなやっかみも出てくるんだろうけれど、彼に関しては、その徳のなせる所で、そういうことも無く、みんなが気持ちよく仕事に全力投球出来る環境作りに貢献してくれた。
 過去20年を振り返っても、これからの20年を予想しても、周囲がこれほど誰かの受賞を素直に喜べるような状況はもう二度と来ないと思う。

20080627 2次会で祝辞を述べる押井守と今野氏

※ <絶版>立松さんの小説「二荒」、別人の著作と類似--新潮社
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080628-00000004-maiall-soci

  ちょっとびっくりしましたね。よりによって彼に関しては、もうそういうことは二度と起きないだろうと思っていましたから。こういう人はそうやってニュースになり、謝罪だの絶版だのとなった時に、自分の名誉がどれだけ傷付くかに関して無頓着なんだろうな。
 もちろん、日垣隆_@盗作バックレ野郎大先生みたいに、盗作が発覚した立松和平に断筆を迫りながら、いざ自分の盗作がバレたらひたすら遁走するというみっともなさメガトン級の男よりは遙かにましな対応ですが。

※ 【今週のおまとめニュース】秋葉原事件、止まらぬ“負の連鎖”
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080628/trd0806280944003-n1.htm
※ 前日の空虚重量69.1キロ

* 歯医者、結局ドクターの方から詰め物の保険外診療云々の話は出なかった。当然そういう話を患者がしていたということはドクターの方に伝わっているだろうから、分割云々ということは嫌なんだろなと解釈してこちらも口にせず銀歯で我慢することにする。別に人前に出るわけじゃないし、使えりゃいいや。

* 歯医者で読んでいた週刊アスキーの神足裕司さんのアキバ事件に関するコラムが非常に秀逸。自分が尊敬できる文章の名手を五人上げよ、と言われたら、私はこの人の名前もくわえることにしているけれど、ただ私が関心のあるテーマがこの方がお書きになるテーマのほんの僅かしか無いのが残念なのですが、そろそろ来週号が出るので、ぜひ皆様にもご一読を進めたいです。内容に関しては後日。

※ メルマガ有料版おまけ untitled

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コメント

20年?30年?どちらが間違い?

投稿: | 2008.06.28 15:33

南西にいかないとオークラには着かない。
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/guidance/access.html
この地図の上が西で右が北と言うのが歪んでいる。
外堀通りではなく、金比羅さんの裏を虎の門病院に行って、突き当りの印刷局やJOMOを右に曲がってすぐ。金比羅さんの地図の方が親切か。
http://www.kotohira.or.jp/koutsu.html
梶ヶ谷の分院から連絡バスにのれば良かったのか(嘘)

投稿: pongchang | 2008.06.28 15:38

>20年?30年?どちらが間違い?

 どちらも正解です。彼はデビュー以来ずっとそういう仕事をしていたわけですが、その功績が同業者の間で認識され始めたのは20年前ほど前からでしょうか。

>金比羅さんの裏を虎の門病院に行って、突き当りの印刷局やJOMOを右に曲がってすぐ。

 印刷局までは記憶通りに歩けたんだけど、ここを右へ行くべきだったのに左折してしまい、大きく南へ遠回りする羽目になったとですよ。

投稿: 大石 | 2008.06.28 15:40

>>アキバ事件
完全に自爆テロと同じ状況だと思いますよ。
宅間守の事件の時に我々はあの事件が今回のような事件が遠くない将来に一般化する程度の想像力を持つべきだった。

「敵」が見えない・見えても撃てない状況では多くが無関係の人間を殺ることで、社会の不安定化を図って間接的に本来の「敵」を撃とうとするのが言葉に忠実な意味でのテロリズムの基本だと考えられるのなら、宅間事件であのような対処を取ったこと自体が宅間守の本来の目的を達成してしまうことだったと気づかない訳がない。

そういう目的のテロルは赤報隊事件やグリコ・森永事件で十分有効性が検証されていて、しかも日本には昔から「窮鼠猫を噛む」「八つ当たり」と言う言葉がある位に逆ギレや頭に来たときに本筋と関係ない自分よりも弱そうな人間に怒りをぶつける行為が一般化している。

今のような社会状況が維持されてる間は、否が応にもこの手の自爆テロ的な無差別攻撃は続くでしょうね。

宅間守は虐げられ続けた人々の一部の中では、事件当初から、池田小学校という「勝ち組」に一矢報いた英雄だった。
そして、自ら死刑を受け入れて処刑されたことによって、彼のテロリズムの真髄は英雄視してきた人々に刻み込まれ受け継がれ、勝ち組だらけの社会を根本から破壊してやる。という彼の歪んだ呪詛も同時に受け継がれた。
右翼にとっての山口二矢や野村秋介よりも、呪詛までばらまいた分、カリスマ性は高いだろうし、英雄と見ない人にとっての危険度は非常に高くなった。

そう考えると、法務省や公安警察が、建前上の職務であるという秩序維持と言う面においては余りに無能過ぎると思いますけど。

極左が煽る必要など全くない。
全く繋がっていない個人が六月八日の十三時前後という時間帯に同時多発で無差別殺人を起こせば、社会を根底から恨む、虐げられた人々の恨みは晴れるし、彼らの呪詛もより広範囲に拡散できる。

そういう素質のある人間を丸め込んで精神的に巧みに操作して追い込まれる状況を作り上げられる人間が裏で連携を取って「育成」すれば済むだけの話です。

そういう私利私欲の為に人を操って自分の手を汚さずに欲望を充足させようとする人間は、今の日本では急速に増えている。アメリカでは十年以上前に既に社会問題化し始めていた。
そういう人間が繋がって何かの目標の為に人を操作することが政治結社の行動よりもハイリスクな時代が来つつある事に留意した方がいいでしょうね。

投稿: 業界インサイダー | 2008.06.28 16:20

右の広告枠ですが、Firefox3では、インテルのやつが一瞬表示されて、その後は全部消えてしまいますね。

投稿: | 2008.06.28 16:47

(^o^)ノ<IEでもスクリプト切れば表示されないぞー

投稿: (^o^)ノ | 2008.06.28 17:15

投稿 | 2008.06.28 16:47 さま

あ、やっぱりそうなのか! ずっと気になっていたのですが、他にも同じ環境の人がいると知って、安心? しましたw

投稿: | 2008.06.28 17:23

>印刷局を左
おしいですね。
アメリカ大使館のすぐ隣りというのともう一つ覚えてほしいのは、「坂の上」ということ。
虎ノ門に金比羅さんがあるのは此処までが家康入府の海岸線でその上の台地に大使館やオークラ、南に下ればNHK発祥の地の愛宕山がある。
外堀通りは赤坂に入る入り江(河口)でそれが霞が関の官庁街を隔てている。川をせき止めてダムを作り江戸の水源としたので赤坂溜池となった。
http://www.dokokyo.or.jp/ce/ce0601/essay2.html
丁度、「ぼくらは、みんなここにいる」の祠が金比羅さんで、築いた石垣がこの虎の門ダムに対応するかしらん?

投稿: pongchang | 2008.06.28 18:06

今野敏先生と言えば、「慎治」(双葉文庫)ですかね。と、言うかそれしか読んだ事ないんですが(失礼)。
主人公慎治がエヴァのシンジから来ている事に興味を持って読みましたが、主人公が救われる物語は好感を持てました。
今度また別の作品を読んでみようかな。

投稿: Nara O. | 2008.06.28 19:10

>Nara O. 様

「隠蔽捜査」がお奨めです。

投稿: ペンチ | 2008.06.28 19:41

>今野敏先生
つい先日『ギガース』の最新刊を読み終えたばかりなので、今回の記事は個人的にとてもタイムリーだったり


>業界インサイダーさま
コメントにて、気になる点がいくつか。
まず、「テロリズム」とは、暴力的な手段によって政治的な目標を達成しようとする志向のことであって、社会の不安定化はその手段に過ぎません。このコメントの主張では、今回の事件や宅間事件に限らず、過去のあらゆる無差別事件がテロリズムになってしまうのですが…(津山事件然り、深川通り魔事件然り…)。
それから後半部分の主張が、過去に革マル派が主張していた、『酒鬼薔薇事件権力謀略説』に酷似しているように思えるのですが…。

投稿: PIAT | 2008.06.28 20:07

ペンチ様

ご教授ありがとうございます。

「隠蔽捜査」アマゾンで見ると、丁度今年になって、文庫本でも出版されていますね。
単行本だと読んだ後置く場所が無いので、どうしても文庫本読みになってしまう自分としてはラッキーでした。早速読んでみようと思います。

「慎治」のあとがきで今野先生は、自身はオタクであると自認し、すべての創造活動はオタクが行っていると書かれています。そうでないとエンターテインメントの作家はマニアを唸らせる事ができないとの事。なるほど。
その一方、一人称に「俺」を使っていらっしゃるので、硬派なオタクを想像しています。

投稿: | 2008.06.28 20:44

>今野敏

ガノタたるものとりあえず「ティターンズの旗のもとに」をお忘れなく!
今年に入ってSTシリーズにはまって全巻読破しました・・・。

投稿: 禿鷲 | 2008.06.28 21:05

PIAT様

いや、むしろ持論の「死刑廃止」に話の前提があるんじゃないかと。
死刑→呪詛完成→カリスマ化→自爆テロ次々みたいな組立て方。
じゃあ終身刑なら、カリスマ化しないのかしら。

投稿: | 2008.06.28 22:39

> ホテル・オークラ

なにげに溜池山王か神谷町の方がアクセスは簡単です。
表からなら溜池山王、裏から少々坂を上がるなら神谷町です。

投稿: マルセル | 2008.06.29 01:08

四巻読了。内容的に、5巻で終了かなとも思ったんだけど、10巻くらい続いて欲しいと思う。

投稿: ととと | 2008.06.29 02:32

今野先生の本は格闘技小説しか興味ないけど30冊くらい家にあるね。
でも、この人が世の中でどれだけ売れてるのかも全く知らないよ。

投稿: abcd | 2008.06.29 08:09

あぁ、今野敏先生ってAOZの人でしたか。
プラモばっかり見てて作者の名前までは見てなかった…

投稿: 00 | 2008.06.29 09:57

>>じゃあ終身刑なら、カリスマ化しないのかしら

 そういえば「どこそこに収監されている誰それの釈放を要求する!」というテロだって、そこかしこで過去何度も起きてますなぁ。

投稿: KWAT | 2008.06.29 15:02

>全く繋がっていない個人が六月八日の十三時前後という時間帯に同時多発で無差別殺人を起こせば

「個別の11人」みたいな…

投稿: とおりすがり3 | 2008.06.30 03:50

2chから生まれた「ブラック会社」出版秘話・新潮社郡司さんに聞く
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITzx000027062008
昔まとめサイトで読んだ気がするが、「リアルタイムノンフィクションです」という前提条件がはずれるととたんに凡庸な私小説になってしまう。ちょっと間違えるとバイラルマーケティングブログと似た気持ち悪さを持ち合わせてもいる。読みたい本よりベストセラーという志向が強まっている現在は中身に関係なくヒットの要素は備えている。SEOの基本である「ググって10番目までにリストされないとその会社は存在しないのと同じ」という検索エンジンの負の側面を図らずも促進しているのと似ている。まあ、こうしてとりあげることがそのことに加担する行為なのはなんとも皮肉だけども。

投稿: | 2008.07.01 00:38

大石ファンであれば
中国系の母をカンボジアで亡くした自衛隊員を主人公にした
『触発』(中公文庫)
がおすすめ。

あとは海上保安庁を主人公にした
『波濤の牙』(ハルキ文庫)
あたりか。

投稿: 技術人 | 2008.07.01 12:01

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