2015年、10月13日火曜日から木曜日の立山旅行記録です。
立山行きを思い立った理由は、9月頃、胃痛があったりして(ーー;)、ちょっとオフが必要だなと感じていたことがそもそもの理由です。本来は連休中に次男を連れて行く予定だったけれども、宿が取れずに断念。自分独りでテントを担ぐことにしました。
ちなみに、私がテント泊するのは、それが好きだからではありませんw。嫌いでもないけれど、一つには、山小屋の時間に拘束されるのが苦手であることと、何より、目的は撮影なので、となると、天気図を睨みながらの行動になるので、前日に宿の予約が取れでもしない限り、テント泊ということになるわけです。
立山を選んだ理由は、長野側、富山側どちらから入るにしても縦走が可能なこと、新幹線で便利になったことが理由です。しばらく前に、「立山ガール」とかを紹介するテレビ番組を見て、ぜひ紅葉シーズンに行きたいなと思いました。
このシーズン、ホテルや山小屋泊は混雑でどうも無理そうだということが解ってから、好日山荘を往復して少しずつ準備を開始する。ウェア、ギア関係で新規調達は特になし。前年中に集めたシュラフ・カバーやバーナーの台座もあり、必要なものは食糧や行動食だけ。
山行なんてものは、準備が9割で、実際の行動の手間暇はほんの1割に過ぎないと言われるけれど、チェックリストを作って準備を始める。
今回、新たに調達したものは、スノーピーク製のミニ・テーブル「オゼン」。重量は300グラムもあって決して軽くはないが、今回、テン場に着いたらそこでベース設営、そこからザックを背負ってあちこち移動という旅でもないので、重量増は特に気にしない。
最近、これより100グラムも軽い「ベルンのトレッキングパッド」という商品も出たらしい。
※ A4サイズの究極の軽量コンパクトなミニテーブルです。
https://store.snowpeak.co.jp/page/87
日本酒を入れるスキットル、テン場は吹きさらしで風がありそうなので、バーナー用の軽量風避け「EPI(イーピーアイ) 風防」 も用意する。作りはチャチだけど、とにかく軽い。もっとも、ミニテーブルは風避けとしての使い道もあるので、必要は無かったかも。 バーナーはいつものプリムス250。ただし冬季用の零下でも問題無く使えるタイプ。正直、その差がどのくらいあるか知らないけれど。前回時のものも含めて2個持参。使わなくとも2つ持ち歩くのが私の主義。
道具の準備と供に、2年前、尾瀬行きの直後に買い直したハイカット・シューズもまた履き始める。足首が痛くて買い直した靴だけど、依然として踝が当たって痛い。尾瀬行きに合わせて買ったものと違って、全く耐えられないほどの足首全体の痛みではないけれど、どうしても踝の痛みが出て来るので、結局ハイカット・シューズは諦める。なんでシューズ・メーカーは痛みが出ないハイカット・シューズを開発できないんだろう。
出発は、3連休が終わった週と決めていたけれど、テン場の管理事務所がいつまで開いているかの正確な情報がない。富山県が運営する立山の公式サイトには、10月一杯とあるけれど、個人のサイトでは、9月中にすでに閉まったというものもあれば、15日(金曜)までというのもある。予定は2泊3日。天候次第で3泊も考えていたので、火曜出発にするか、天候の回復を待って水曜出発にするか迷う。
食糧は、3日分。最低7日間はビバークするだけの行動食も用意する。テン場のことがあったので、結局、火曜決行ということにして、前日、JR駅でスーパーあずさの始発切符を買いに行く。ちなみに、前日に切符を買うのは、退路を断つためw。
列車は、新宿発の始発自体が遅いせいで混んでいる。やむなくグリーンを取る。その時点でグリーンもほんの数席しか余っていなかった。
※ 火曜、出発編
一昼夜掛けて準備、寝ないまま出発。結局、ドイターの70リットル・ザックに入りきらず、デジ一眼、コンデジ、ビデオ、タブレット端末&キーボード等、電子ツールは一切合切肩掛けバッグに入れて持つことに。ザックの重量は知れているけれど、こっちは重い重い!
出発時の関東地方は快晴。考え事をして歩いていたら、乗る予定の電車を一本逃してしまう。というか、6時半前後のノクチ駅下りって、ダイヤより早めに出発するのね。次の電車を待つ間に逆算してみたら、定刻より1分近く早く駅を出ていた。
ちなみに、新幹線で富山経由で無く松本経由にした理由は、馴れているからではなく、順光で撮影するためです。これが、新幹線で富山側から入ると、一貫して逆光での撮影になります。でも松本側からだと、午前中に黒部ダムを順光で撮影でき(放水期間中は虹を撮影できる)、仮に日帰りでそのまま富山側に抜けるとしても、富山側に降りる頃には、これも順光になります。
余裕を持って出たので、しかしあと3本くらい逃しても問題無し。南武線に乗っている途中、早くも忘れ物に気付くorz。どうもシュラフカバーを入れた記憶が無い。不安になってくる。立川で乗り換えたら、あの時間帯、八王子方面へ向かう学生さんやリーマンでホームが溢れている。てっきり下りは空いていると思ったのに。
スーパーあずさ始発は、立川(7時半前)を出た時点で、グリーンも指定席も満席。朝一から商品満載のカートが頻繁に回ってくるけれど、松本までは寝るだけ(もちろん景色に見とれて眠れない)。甲府を過ぎると、段々と山々が紅葉していく。早朝、光が山々の木々を真横から照らす場面は見ていて気分が良い。
うっかりして、切符を松本までしか買わなかったので、車内で信濃大町まで買い足す。
9時54分大糸線・松本乗り換え。乗り換えの時間を利用してザックを確認。やっぱりシュラフ・カバーが入っていない _| ̄|○ 。このテント泊、インフレータブルとシュラフカバーの効果を確認することが目的だったのに。までもインフレータブルがあるから何とかなるか。(チェックリストまで作ったのに……、と後で確認してみたら、肝心のチェックリストに書いて無かった。パッキングの現場にはその現物を置いてあったのに、何しろ筒物wがやたら多いので気付かなかった)
ここからの2両編制の車内は、黒部観光へと向かう団塊世代で一杯。でも立っている人はいない。座席は8割方埋まっている状態。車内で自撮り棒を振り回す中国人のカップルも。それにしても沿線は綺麗。ずっと住宅街の平野部を走るんだけど、あれは何処の駅だったか、駅のホームにリンゴが成っている所まであった。
1時間走って信濃大町下車(標高713メートル)。そこで黒部観光の玄関口、扇沢までの路線バスの往復券を買って乗る。路線バスと言いつつも、バスは観光バス仕様。もちろん満員。扇沢手前で鹿島川を渡るんだけど、ここにある大町温泉郷という所がまた良さげな所なのね。北アの水が流れてくる鹿島川沿いには遊歩道も作ってあるし。復路では、大勢の団塊さんがここで降りて行ったけれど。(2枚目はバス車窓。3枚目は、扇沢のターミナル前)
ここを過ぎてバスが別荘地を登り始めると、紅葉がいよいよ本格的に。カラフルな原色が陽光を浴びて煌めいている。もうこの辺りでお腹いっぱい。デジ一眼を出したくなる所をじっと我慢。窓越しにスマホで撮影する。
扇沢着(標高1433メートル)。トロリーバスだから、ここはたぶん駅なんだよね。一瞬駅の外に出てコンデジで写真を撮る。お天気雨がパラパラと降っている。当然ここからもトロリーバスは満席。観光シーズン・モードの2台で出発する。ずっと登りのせいか、このトロリーバスは異様に遅かった。荷物があるので荷物代を別途払う。麓で300円。ダムからさらに200円だったような。赤沢岳(2678メートル)直下の関電トンネルを6.1キロ、16分。
黒部ダム(1470メートル)に到着すると、上部の展望台まで延々と内階段を登る。荷物があったので途中3回ほど休憩したような。階段途中に黒部の水が湧き出す踊り場もあって快適。
外に出ると風が強い。でもピーカン。天候の読みが当たった。富山側はいまいちだけど、黒部ダムは晴れているとふんだ。
ザックを壁際に置いてコンデジにPLフィルターを装着して撮りまくる。ワゴンでコーヒー等売っているけれど時間が勿体無いのでひたすら撮りまくる。幸い虹の写真も撮れた。
下へ降り、撮影しつつダムを反対側へと渡る。ダムから見下ろす山々の頂きはすでに雪を被っている。
ここからケーブルカー(トンネル)で標高1828メートルの黒部平を経て、今度はロープウェイで標高2316メートルの大観峰へ。屋上展望台に出て、ダム湖を撮影。正直、ゴールの室堂がやたら遠い。こんなに時間が掛かるとは思わなかった。
(自画撮りでハーネスに下がっているカラビナの隣りのは、パラコードで編まれたブレスレット。解くと2メートルほどの長さのロープになる)
ラストワン、3.7キロの立山トンネルを再びトロリーバスで登る。真上は標高3015メートルの立山。なぜか今度のバスは速かった。しかし車内で少し具合が悪くなる。結局あずさの中でも全く寝なかったので、睡眠不足と高度のせいで、若干気分が悪くなる。
やっと最終目的地、立山の室堂ターミナル(2450メートル)に到着。さすがに室内でも寒い(駅は、事実上地下にある)。
鉄道では、一応、野辺山駅(1345メートル)が日本で一番高い駅ということになっているけれど、本当はここ室堂が一番高い。なぜならトロリーバスは鉄道扱いだから。そのせいで、野辺山に関しては、「一番高いJR駅」などと言われる。
まずは案内所へと赴き、登る予定だった雄山の状況を尋ねる。したら、女性ハイカーのトレッキング・ポールが一本壊れたらしく、ガイドのおじさんが一生懸命修理中。こうなったらもう修理は無理だろうと思って作業を見守っていたら、見事直す。さすがプロ。
「軽アイゼンとかなきゃ無理ですか?」と聞いたら、「とんでもない! 10本爪がいる。なおそれで歯が立たないから止めときなさい」。
え? もうそういう状況なんだ。ちなみに軽アイゼンも10本爪も持参せずorz。
上の階に上がって、階段の踊り場の窓から外を見て、おったまげる。ひっくり返りそうになる。真っ白じゃないか! _| ̄|○ 。冬山も何も、外は真っ白雪景色。これはやばいぞ……。よし、無かったことにしよう(^_^;)。この時間なら、まだ十分、富山側へ降りられる。来なかったことにして、富山で宿が取れるならそこで一泊。新幹線でそのまま帰っても良いし。とにかく安全第一だ……、と思いつつも、トレッキング・ポールを出し、裏地ボアのジャンパーに袖を通し、ザックの上からポンチョを被って外に出てみる。トレッキング・ポールを持って来て良かった。持参すべきかどうか最後まで迷ったのに。
しかし、富山側のこの天候は十分予想したことで、ここまで自分の天気予報は全部当たっている。ここを我慢すれば明日はピーカンに晴れるはずだと自分を奮い立たせる。
でも拙い(>_<)。視程が50メートル無い。どっちがテン場かも全然解らない。確か今さっき歩荷さんが二人あっちへ行ったからそっちの方だな、と歩き出す。東西南北を確認しようとすら思い付かない。こういう時の人間って駄目ね。ほんの一瞬、磁石を確認すれば済むのに。
そばで、観光客を連れて来たガイドさんが、「皆さん、行っても良いですけど、この天気でたぶんみくりが池は見えないと思いますよ」と喋っている。
絶対に拙い、非常に拙いorz。ポールの先端が刺さないほど雪面はカチカチ、横殴りの風でポンチョも辛い(基本的に、稜線上の移動でポンチョを被るのは間違った行動)。
冬山は絶対にしない主義だったのに……。と激しく後悔しながら、階段を降り始める。観光客は当然全くいない。すれ違う人間は、ハイカーではなく山登りスタイルの連中ばかり。えっちらおっちらしながら、こんな所で死んで溜まるかと三点支持、三点支持……、と呟きながら一段一段慎重に降りる。
しかし見事なまでに入り組んだ階段。まるでロード・オブ・ザ・リングに出て来るドワーフが作った地中の階段のように右に折れ、左へ折り畳まれと入り組んでいる。晴れていればさぞ眺めが良いんだろうけれど、今はこの世の地獄。
雷鳥荘まで達した所で、やっと崖下にテン場らしきものが見えて来る。視界は悪いもののテントらしきものも見えてほっとする。自分一人じゃなかったことで安心する。ここでやっとスマホを撮りだして周囲を撮影する余裕が出て来る。(顔面蒼白の自撮りwと雷鳥荘付近から下を見下ろした風景。唯一写っている建物がテン場の管理事務所。横長写真では、管理事務所の左側にテントも確認できる。写真上辺の曇りはレンズではなく、実際のアンダー・ザ・クラウド)
雷鳥荘からは、ほぼ真っ直ぐ下へ伸びる階段を降りてテン場へ。16時半過ぎテン場着。この日は、自分のテントも含めておよそ10張り前後のテントがあった。管理事務所に直行して千円を払う。したら、下の山小屋2軒はもう閉鎖されて、風呂は雷鳥荘まで登って貰うしか無いとのこと。ちと残念なれど、この寒さでは風呂に拘るほどのこともない。
この寒さだけど大丈夫ですか? と尋ねられたので、まあ覚悟して来ましたからと応ずる。
テン場は、十字路を挟んで、なんとなく左側がパーティ、右側がソロという感じに別れていたので、右側へと逃げた所に場所を確保する。ちなみに自分が来た時にはもう張られていた一番右端のテントは、私が撤収した後も居残っていた。
雪が舞う中、荷物を置いて、しばらく風向きを確認し、雪の上でアライのトレックライズを張る。底のシーム部分の接着剤が相当部分変色していたが、使用には問題なさそう。フライを張り、ペグを何度も刺し直して中に入り、真っ先にベンチレートを締める(最近のテントは密閉性が高いので、その代わりとしてベンチレート(空気穴)は構造的に絶対締め切れないように出来ている)。
テントの中に入ってやっと落ち着く。まあなんとか辿り着いた。後は明日晴れることを祈るのみ。(テントと光の加減からして、奧は大走り方向)
まず、ウレタンマットを敷き、その上でインフレータブル・マットを膨らませて座る。雪面なので冷たい代わりに柔らかい。最高に居心地が良い。実の所、ウレタンマットを持参するかどうか迷ったのだけれど、インフレータブル・マットだけでは不安だったので、ザックの中を占領すると解っていて持参した。
ただ、後で考えると、我が家には息子たちの分のインフレータブルもあったので、インフレータブル2枚+シュラフ2枚でも良かった。
しかし、このシュラフは薄いw。夏場に見ると確かに3シーズン用だけど、冬山で広げて見ると、ただの夏用にしか見えない。テント内で移動する度に雪がサクサクと鳴る。
いろいろ考えながら、飯の準備を始める。トイレも兼ねて、ヴァームの粉末でハイドレーション・パックを作り、料理用の水をコッヘルに入れて持ち帰る。
一応、外でバーナーを焚く予定だったけれど、とてもそんな天気ではないので、やむなくテントの中で火を点ける。それからの二日間、外でバーナーを使っているハイカーは一人も見なかった。
テント内でバーナーを使うのは、中毒を防ぐために止めろということになっているけれど、それ以上に怖いのは火事。一瞬で壁に火が点くから。幸い3人用テントで一人だと、広々と空間を確保できて、まま安全に使える。ボンベ用の台座とスノーピークのミニ・テーブルが役に立つ。
最近の山雑誌では、責任回避のために、テントの中では決して火は使わなかったことになっているけれど、そら雨が降ったら中で調理するしかないでしょうw。
この高度の冬山なので結露もしない。今夜の夕食は、山の山菜ご飯(アルファ米)。豚汁スープを食べている間にアルファ米を戻す。19時頃、あられ混じりの雪がテントを叩き始める。風もそれなりに強くなり、何度かペグの浮きを確認しに出る。
山ご飯は、別に美味とかそういう感じはなくて、ただ淡々と食事を進めて、最後にお湯を沸かしてカフェオレを飲む。外出用にサンダルを持参すべきかどうか一週間迷ったけれど、結局持って来なくてよかった。雪に埋もれるだけだった。
防寒状態を確認するためにいったん横になったのが20時。靴下を二枚重ねし、さらにズボンの上から厚手のジャージーを履いて寝る。この時点では室内気温はまだ0度前後。所が、寝間着代わりに持参したはずのフリースのシャツが入っていないことに気付き、登って来た時のままの格好で寝る羽目に。その代わり、着替え用のTシャツを2枚重ね着する。さらに、ユニクロのウルトラライトダウンベストを着る。さすがに冬山ではペラペラのベストなれど、これがあるとないとでは大違い。
腰の辺りは極めて良好。さすがマットとインフレータブルの2枚重ね。なんともない! 一番冷える腰と肩の辺りに全く寒さを感じない。寒いのは、まず両手の指先。ウォーキング用の薄い手袋しか持参しなかったので、結構冷える。それから、両肘。これが意外に冷える。寝ている間は、両肘がシュラフの中で外側へとくの字になって突っ張る形になるので、ここがどうしても冷える形になる。
22時。トイレに起きる。持参したスキットルから、日本酒「那智の瀧」をコッヘルに入れて飲む。普通に美味いが、睡眠薬代わりにはならず。さらにコッヘルで熱燗にして見たけれど、これはあまり美味しくなかった。
最後のトイレは0時。さっきまでシャーベット状だった通路の水たまりがさすがに凍っている。テント内気温はマイナス5度に。ただし、外に出てもそんなに寒いわけではない。雪が降っている間の気温低下は知れている。問題は明日の夜だと割切る。両肘の寒さ問題を解決するために、持参した2枚のトランクスに腕を通して巻き付けることを思い付く。これが成功して朝まで熟睡する。
※ 2日目14日火曜。起きたら、やはり結露は無い。快晴! 晴天。雲一つない。狙った通りのお天気になった。路面は凍っているもののこんなものだろうという程度。積雪は5センチから場所によって10センチ前後。
朝食は基本行動食。まず身体を温めるために味噌汁。スポーツ・ゼリーに山羊羹に、最後にお湯を温めてカフェオレ。本来なら外に出てゆっくりコーヒーくらい飲みたいが(好日山荘で買った、山用の焙煎コーヒーを持参)、とてもそんな気温じゃない。
食事しながら準備。普段ウォーキングで使っている20リットルのザックを今日の行動用ザックとして持参したので、ハイドレーション・パックを入れ、タブレット端末やら何やらを詰めていくが、とうてい20リットルには収まらない。結局、ショルダーにカメラ本体やビデオを入れて持ち歩くことに。テントに鍵を掛けて出発したのが7時半。
雷鳥荘までひたすら登り。足下はカチカチ。明日、ここを荷物を担いで登らねばならないのかと思うと憂鬱になる。雷鳥荘の外のベンチで、この旅行で初めてデジ一眼とショルダーハーネスを出す。この旅用というわけではないけれど、新調したSIGMA 標準ズームレンズ Contemporary 17-70mm F2.8-4 DC MACROにPLフィルターを装着して撮影開始。
それにしても一面雪だらけ。観光客がちらほら見えて来るので、室堂山荘への空いている迂回ルートを取る。おかげでみくりが池を順光で撮影できた。風もなく、水面は鏡面状態に。
撮影が目的なので、たっぷり時間を取る。室堂ターミナルに近付くと観光客はさらに増え、撮影のお手伝いをしつつの行動。それにしても外国人が多い。欧米人の数は少ない。欧米人はほとんどが、それなりの山のベテランという感じなれど、韓国人と中国人の団体客が半々。トレッキング・ポールもなしに、みくりが池まで降りようとする無茶なお客もいてはらはらする。
ターミナルの郵便局で宅配に関して質問。上の土産物屋で出してくれとのこと。ここから先はポール不要なので、荷物を減らすためにコインロッカーに防寒具他諸々を仕舞う。ついでにコインロッカーがある待合室でメルマガ&ブログの更新。
すでに山の昼食の時刻を過ぎていたものの、下へ降りる予定で美女平行きのバスに乗る。このバスからの眺めも絶景。途中、滝見台でバスが減速し、称名滝(しょうみょうだき)を一望する。いつかあそこまで行きたい。
美女平。バスが着いてみれば意外に何もない。時間がずれていたのでターミナルは人影まばら。立ち食いそばくらいあるかと思ったけれど、それも無い。ケーブルカーで下まで降りてみるべきか一瞬迷ったけれど、今日の目的は弥陀ヶ原の散策撮影なので諦める。バスを待つ間、美女杉を撮影し(なんということもないただの杉)、土産物屋でリンゴジャムパンなるものを買って食べる。せめておにぎりくらい売って欲しい。
また室堂行きのバスに乗る。(↓これが何てことはない美女杉)
※ 弥陀ヶ原(みだがはら)標高1930メートル。バスから降りたら、散策に同行して下さるボランティアのパークガイドさんがいらっしゃる。中年女性と、もう白髪の70歳前後の女性(立山ガールじゃなかとよ! _| ̄|○ )。帰りの室堂行きバスを予約してから早速撮影に出かける。富山平野へと落ち込むなだらかな斜面。湾側から立ち上ってくる雲が、この辺りで千切れて文字通り雲のように消えて行くのは幽玄な風景。手を伸ばせばその雲に届きそうな感じがする。
景色を楽しむ余裕無く、撮影しながらサクサクと歩く。バス停まで戻ったら時間が大幅に余ったので、バス停待合所のロッカーにザック一式を預けて、カメラだけ持って、立山カルデラ展望台へと向かう。15分、ひたすら登り。誰ともすれ違わず。陽はもう西に傾いている。頂上に着いたら、これも意外にどうってことない眺めだった。(↓立山カルデラを見下ろす。意外に、ただの渓谷)
バス停まで降りたら、観光客の女性が「3日前探してやっとここだけ(弥陀ヶ原ホテル)空いていた」と喋っている。いやぁ、ここでも十分だよねぇ。眺めは絶景だし、雷鳥沢より暖かいしorz。
バスで室堂ターミナルに戻り、何か食べようと思ったら、まだ16時前なのに、食事処は全部締まっている(基本15時には閉まることは知っていた)。ロッカーの荷物を回収し、土産物屋を覗く。ノースフェイスの1万円もするオーバーを買うべきか迷ったけれど、女性用の長手袋(日焼け防止用)があったのでこれ幸いと飛びつく。これでたぶん肘までカバーできる。ついでにホッカイロも4枚買い足す。
外に出ると、テン場周辺の山々は、前夜の雪がだいぶ溶けて、紅葉の緑が復活している。山々を染める黄金色の夕焼けを撮影しながら雷鳥沢へと降りる。
テン場に引き揚げたら、うちのテントから通路を挟んですぐ近くに、石井スポーツのゴアテントが一つ建っている。こんなにもテン場は広いのにどうして人んちの近くに建てるんだよ! とムッとするが仕方無い。あんたは独りになりたくてソロやってんじゃないのかい? べらぼうにテン場が空いているのに、やたらと他人の近くにテントを張る人がいつもいるけれど、あれはどういう判断なんだろう。
にしても、冬山のせいで、フライを張っていないハイカーが多い。冬山だと解り切っていれば、フライは確かに要なしだけど(そもそもペグも打てない)。
地面は当然カチカチ。昨日の同じ時間帯にシャーベット状だった所も凍り付いている。テントに戻ってタブレット端末の電源を入れたら、バッテリーが全部抜けている。そう言えば昨日から、電源を切ったはずなのに、シャットダウンに失敗するトラブルが頻発していた。たぶん気温のせいだろう(それにしても朝は満充電状態。それから終日暖かい場所にいたんだが)。持参したモバイル・バッテリーの数は合計4個。ガラケーも、普段なら1週間くらいは持つのに、この状況で半分に減っていたので充電。タブレット端末は、ホッカイロを張った大容量充電池で充電。
写真を整理するつもりだったけれど、指先が全く動かないほど身体が冷えているので諦める。
今夜の飯は、ビーフシチューにシーフード・リゾット。リゾットは、お湯を入れすぎてちと失敗した。しかしテント内でバーナーを焚くとあっという間に暖まる。
20時頃にはもう寝る。寝る前に、この放射冷却の夜をクリアするために持参した300カロリーの蜂蜜を飲み干す。テント内気温はすでに-5度。前夜は足下にポンチョを巻いて寝たけれど、今夜は、ゴアの雨合羽ズボンを履いた上(ズボン3枚!)で、ポンチョは上着として着て寝る。
同時に二枚重ねした靴下の裏にホッカイロを貼る。お腹の上にも一枚、両脇の下にも一枚ずつ。所がホッカイロがほとんど暖まらないorz。無いよりはマしという程度。次からは白金カイロの一つも持参しよう(冬山はやらないけど)
0時前後、トイレに出る。テントとトイレを往復する程度の運動でも、身体は十分に暖まる。トイレから帰る時に、一瞬ヘッドランプを消して空を見上げる。眼が暗闇に馴れるに連れて、視界に入ってくる星がどんどん増えて来る。圧倒的な迫力。
レソドルミソを1錠飲んで寝る。しかし2時頃、全体的な寒さで目が覚める。どこがどうというわけではないけれど、寒さで目が覚める(にしても冬山は小便袋が必要ね。まじでそう思った)。トイレを往復して体温を戻し、バーナーを焚いてテント内の気温を一瞬温める。弱火で焚き、しかも換気用の隙間を作っているにも拘わらず、ほんの5分で-5度から+5度へと暖まる。レソドルミソはさっき丸々一錠飲んだばかりなので、スキットルの日本酒を冷たいままほんの一杯引っかける(このスキットルに入っていた残りは、今もまだちびちび飲んでます)
。
朝までぐっすり、4時間熟睡する。この三日間で一番気持ち良く快眠できた。ちなみに防寒対策は、この上に、ペラペラのビニール・ポンチョにエマージェンシー・ブラケットとまだまだ術はいくらでもあった。
※ 3日目木曜、撤収日。私より先に張られていたテントのソロの若者は、今日もまた何処かにお出かけして行く。こんな寒さで3日も4日も粘れる体力が羨ましい。
片付けをしつつ朝食。ペグを抜こうしたら、ペグの周囲に氷が張ってかちこちに凍っている。汚れたテント裏を乾かすために、朝日に向けてテントを倒す。ハイカー至福の時間。ここいらで熱いコーヒーでも一杯と行きたい所だけれど、撤収準備は山積み。荷造りが片付いたのは9時過ぎだったような。今回お役立ちのツールの写真や自撮りをしてテントが乾くのを待つ。単眼鏡を出して、肝心の雷鳥を探すが全く気配なし。
10時出発。歩き出そうとしたら手袋が一つ無いことに気付く。周囲を探したけれどない。諦めて出発する。雷鳥荘まで40分と弾いたが、なんとか30分で辿り着く。辿り着いた瞬間、目の前に無くした手袋が落ちてくる。ラッキー! それにしても、このドイターのザック、以前はウエストベルトが最高にフィットしてくれたけれど、今はやたらとベルト部分が硬くなって担いだ後にきちんと締められない。どうしたものだろうか。こんなの直せるんだろうか。
室堂は今日もピーカン。コンデジで撮影しつつ室堂ターミナルを目指す。荷物を担いでいるせいで、雷鳥沢へと降りて行くハイカーから下の状態を尋ねられる。
さすがに山に登っている人は見なかったけれど、炊事場では、一瞬男かと見紛うような山ガールが雄山に登ったな話をしていた(実際、すれ違った時は男だと思った。喋っているのを聞いて女だ! と驚いた)。冬山の訓練には、良い状況だと思う。天候は安定しているし、寒いだけで足下もそんなに悪く無いし。みくりが池に近付いて来ると、すれ違う観光客が増えて時間を取られる。
ターミナルで一旦荷物を整理。ロッカーに持ち帰る荷物を入れ、土産物屋で一通り土産物を買った後、でかい段ボール箱に行動用ザックやシュラフ等を入れて宅配にする。これでやっと楽になる。
12時。荷物を担いで立山ホテルの喫茶店に。この旅行初めてのまともな食事にありつく。
コーヒーを飲みながらメルマガ&ブログ更新。
食事後は、逆コースでひたすら下るだけ。なぜ富山側へ抜けて新幹線にしなかったかというと、東京駅の混雑が嫌だから。せっかくの骨休みなのに、最後の最後が東京駅の混雑って嫌じゃないですか。甘美な想い出も台無しですよ。大宮乗り換え湘南ラインという手もあるけれど、こっちは、池袋-渋谷の鬼のような混雑と戦わなきゃならない。だから帰りも松本経由にしました。
大観峰着が13時半。雲が出て来ている。でも槍ヶ岳方向は晴れて綺麗に見える(これが、雷鳥沢を出発して、鹿島槍ヶ岳を経て黒部ダムに降りて来る2泊3日のルートがあるんだけど、結構な強行軍なのね)。室堂から西は、すでに紅葉も終わりという感じだったけれど、この辺りは今がピークでひたすら美しい。
そこからさらに下り、往路で使わなかった黒部ダム展望台の外階段を昇ってみる。ちなみに、黒部ダムの放水は今日15日が最終日。黒部観光も事実上、今日が最後。
残念ながら空はもう完全に曇っている。どの道、この時間帯は逆光なので写真の写りはいまいちなれど。
扇沢着が16時前。
ここからのバスが補助シートも使うほどの満員だったせいで、信濃大町到着が遅れ、松本行きの電車をまるまる1時間、ひと便逃すことになる。でもそのお陰で、切符を買ったり缶コーヒーを飲んだりの余裕が持てた。往路のことがあったので、帰りも一応、グリーン券を買う。
でもここも良い所ね。沿線にはずっと住宅街が広がり、夕方の電車には地元の中高生が乗ってくる。私の故郷は、30年前にその環境を失ったけれど、地方はいつまで鉄路とこの原風景を守れるだろうか。
松本駅での乗り換え時間は微妙な感じで、トイレに寄っている間に、駅ナカ唯一の駅弁売り場に客が殺到していて、自分はどうにか最後の一個にありつく。勿体無いなぁ。この10倍商品があっても捌けたはずなのに。私が買ったのは、確か安曇野の釜飯とあった。温める機能があれば言うこと無いけれど、これも山帰りとしては美味なり。
グリーン車は行きと違ってスカスカだった。松本を過ぎて次の駅(茅野辺り?)で、靴をピカピカに磨いた40歳前後の営業マンと思しき男性が乗ってくる。
早速PCを出してお仕事に励む姿は、できる営業マン! そのもの。PCには覗き見防止のフィルムが貼ってある。さすが出来る男は隙がない! と感心していたら、トンネル区間に入る前に仕事モードは終了(だって携帯がぷちぷち切れるもんね)。
しかし今度は、10インチのタブレット端末が出て来て、ほほう! できる営業マンは二刀流なのか。やっぱりお客に見せる時はタブレットなんだろうな……、と思っていたら、こっちはフィルムが貼っていない。
画面に「VIPER」。ほほう、できる男は、VIPER速報をチェックしてお客との世間話のネタに使っているんだな!wと感心する。
21時過ぎに帰宅。旅を終える。帰宅して初めて、食べ物以外の土産ものをキーホルダー一つ買わなかったことを思い出す。
(今回のEOS70Dの撮影でRAWデータが34メガと、最もファイル・サイズが大きかったカット。右下にみくりが池。あちこちに人影あり)
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