宇宙人ブースカ氏の記事に関して
※ エア・インディア機墜落事故、なぜ「ボーイング787」は滑走路の端で離陸したのか? | Merkmal(メルクマール)
https://merkmal-biz.jp/post/95291
*離着陸時の墜落事故につながりうる!? フラップ操作を考える
https://news.mynavi.jp/techplus/article/aero_tech-490/
このエントリーは、「ヘリは何処でも着陸できる」とか、「珠洲に前哨基地を作れる」とか無茶苦茶なことを言っているブースカ氏の記事に関してです。実は神聖三文字氏と、まったく同類のブースカ氏の記事に関しての批判です。
まず気温のことに関して。これは何ら離陸の支障にはなりません。摂氏37度で支障が出ていたら、温暖化の昨今、大半の西側先進国では、夏は運航に大きな支障を抱えることになる。
この気温で気を遣うことになるという話は、B727とかの、ナローボディ機時代の話です。私も大昔に一回、リノで経験しました。あの時の機体は何だったか? 離陸寸前になって、降りてくれるボランティアを募り始めた。
B787-8型機がロンドンに飛ぶまでに必要とする燃料は、満席状態でざっくり50トン前後。まだ50トンの燃料を積める(なんと日本からNYまで飛べる!)。なので、仮に満席であったとしても、その気温と機体重量のことを考える必要は、この路線に関してはまずありません。
そして、この記事タイトルにもなった滑走路の端で離陸したという件に関して。
>大型機での危険な短縮離陸
>RAT(ラム・エア・タービン)の展開を確認したという情報も、一部のメディアに流れ始めた。
>同機は滑走路の中央付近から離陸滑走していた形跡があった。
>滑走路を半分しか使っていなかったのなら、滑走路の端でやっと浮き上がったことにも合点がゆく。
RATは、独特の音を発します。かなり大きい。それが、動画に記録されているという話も流れたけれど、ちと解らない。RATを出す暇があったかなぁ……、という疑問は抱く。
事故の第一報を聞いて、私はもちろんFlightradar24のログを検索しました。それで、いったいこれは何だ? と首を傾げた。滑走路中央から離陸している。
Google earthで該当空港を出し、スケールで測って、そんな馬鹿なと思った。ほぼ満席状態でロンドンまで飛ぶ機体が、浮き上がれる距離ではとてもない。
この時点で、私は、このログはADS-Bの受信上のバグだろうと判断した。どういうケースでバグというか、粗い情報が出てくるのか、ChatGPTに聞いた所、6件のケースを出してきました。私のようなラジオ世代なら誰でも思い付くような原因で、精度に大きなムラが出てくる。
まず、離昇した地点に関する情報が、どの程度の精度を持っているのかがすでに怪しい。ただし、この時点ですでに推力を喪失しつつあったということであれば、納得はできる。ちなみに、この時の離陸重量と気象条件だと、2.500メートルもあれば、十分に離陸できます。
そして、肝心の、滑走路の中程からの離陸に関して。この事故の発生当時、私は原稿のゲラに掛かっており、多忙なままパリへ旅立ったので、その後の事故報道等をフォローしている暇が無かったけれど、早い時期に、この「中程から離陸した」という情報は否定されたものと認識していました。
なので、今回、ブースカ氏が、それを今頃持ち出したことに非常に驚いています。
※ Air India Boeing 787-8 crashes on takeoff in Ahmedabad
(エア・インディアのボーイング787-8がアフマダーバードで離陸時に墜落)
https://www.flightradar24.com/blog/live/air-india-boeing-787-8-crashes-on-takeoff-in-ahmedabad/?utm_source=chatgpt.com
※ Why flight A1 1717 used full runway length - The Economic Times
(A1便1717便が滑走路全長を使用した理由)
https://economictimes.indiatimes.com/industry/transportation/airlines-/-aviation/why-flight-a1-1717-used-full-runway-length/articleshow/121810580.cms?from=mdr#google_vignette
>アーメダバードの滑走路23の全長が使用された
受信ソースからのデータを個別に処理中です。追加処理の結果、#AI171はアーメダバードの滑走路23を全長にわたって離陸したことが確認されました。滑走路23の長さは11,499フィートです。航空機は離陸滑走を開始する前に滑走路の端まで後退しました。<
そもそも、このインターセクション・ディパーチャー(Intersection Departure)で離陸した話が出る原因となったFlightradar24自体が、ブログで否定している。先々週の12日付けの記事です(事故当日の日付けなので、恐らく加筆が入っている)。ブースカ氏はこれを読まなかったのか?
彼の記事の公開は21日の土曜日付です。先週、この情報を巡って、欧米では再び議論があったのか? と思って検索したのですが、現状では、私はそういう情報に辿り着いていません。
この機体は、たぶんバックトラッキング(Backtracking)を行い、滑走路全長(Full length)を使って離陸した。工事等で誘導路が使えない空港、そもそも誘導路を持たない飛行場というのがたまにあります。そういう時はどうするのか? 当然、滑走路をインターセクションなり、逆走して離陸ポジションなりに向かい、そこで180度回頭して離陸することになる。
該当空港では、それが普通に行われていた。該当便に関してももちろん同様です。滑走路端のあんな狭い場所で、あんなでかい機体が回頭できるのか?
787よりでかい777は、メインギアにボディギアステアリング機構を持っているが、787にはありません。この機体は、ノーズギア操舵と、メインギアのブレーキを使ったドリフトターンで回頭し、その最小旋回半径は、およそ21メートル……。本当か?w。とりあえずAIはそう答えてきた。
Google earthで覗く限り、滑走路端は、十分その広さを確保しています。私の判断としては、この機体が、滑走路途中から離陸したと思える合理性は無い(そんな無謀、パイロットは思い付かないし、管制官も気付いて止める)。それを裏付ける情報も、先週どこかであったとは思えない。素人ではない彼が、なぜこんな判断に至ったのか? 私は不思議でなりません。それを判断した根拠を教えてほしい。
>滑走路の全長を使っていたという映像記録や管制塔との交信も報じられていないため、これもやはり不確かな情報だとしかいうことができない。
これを言うのであれば、逆に、滑走路途中から離陸したとする映像記録や管制塔との交信は報じられたのか? 現状では、その唯一の根拠であるFlightradar24自身が、それを否定した事実をどう解釈すべきなのか。
そもそもが、問題の焦点は、推力と電源喪失にあって、それは、滑走路の何処から離陸作業を開始したかは関係しないわけですが……。
いずれにせよ、このメルクマールの記事は、主要なポイントに関して、ほぼ外しており、現時点では、撤回されるべきものだと指摘せざるを得ません。
それに、記事公開が土曜とは言え、なんで私のような素人が、こんなこと書かなきゃならないんだろう……、と滅入っています。
誰か、業界の中で、この記事内容の主要ポイントは間違っている、と批判した専門家はいなかったのか? それとも、誰も関心のない問題なのか?
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コメント
流石に滑走路半分で意図的に離陸したってのはないのでは?そこまでTakeoff Dataに余裕はないでしょう。V1でReject takeoffして残RWYで余裕をもって止まれる近距離便のみです。
無論、高温でエンジン推力は落ちますが大石氏の言う通り、外気温37℃ではそこまで致命的ではない。
しかし確かに離陸時の土ほこりが気になりますので浮揚が遅れた可能性はあります。仮にV1以降の両エンジン推力低下があったなら起こり得ます。そのまま盛大に滑走路をoverrunしてチェジュ航空みたいになるかギリ離陸して飛行継続できるかは賭けです。想定はあくまで1発Engine停止ですので。
投稿: 名無しの助 | 2025.06.23 18:28